中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)
2016.06.03
スキルアップ
第9回 「中国語―台湾と大陸ではどう違いますか?」
ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生が執筆します。すぐに使えるフレーズがたくさん詰まっていますので、みなさまのお役に立つこと間違いなしです。今回は、「中国語―台湾と大陸ではどう違いますか?」です。どうぞお楽しみください。
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中国語を使う仕事の現場では、クライアントからしばしば台湾語、広東語、北京語、上海語とリクエストされ、まるで違う言語のように扱われ、実にややこしいです。さて、一体どこがどう違うのでしょうか。今回は例を挙げながら、纏めてみたいと思います。
そもそも1949年、中国の国共内戦が終わり、国民党が台湾、共産党が大陸を支配する局面となり、国民党は今まで大陸で実施していた「国語」教育を引き続き台湾で行いました。が、一方、大陸では1950年代後半に文字の普及をさせようと、文字改革と文章の口語化、つまり簡体字と北方の方言を基準にした「普通話」を教育システムに取り入れ、定着させてきました。こうして、1950年代以降の小学生たちは簡体字を勉強していて、それまで使っていた「繁体字」がだんだん読めなくなりました。
かれこれ70年近く、台湾では繁体字のままの「国語」を、大陸では、簡体字となった「普通話」が学校教育やメディアで使用されてきましたので、繁体字と簡体字の差は一番大きい違いと言えます。
●例1
| 繁体字 | 簡体字 | 日本語参考 |
| 資產 | 资产 | 資産 |
| 學習 | 学习 | 学習 |
| 時間 | 时间 | 時間 |
| 臺(台)灣 | 台湾 | 台湾 |
「臺」を「台」とも書かれるように、台湾でも一部の略字を使っています。また、繁体字は台湾だけではなく、大陸以外の中華圏(香港、マカオ、その他の華人世界)においても使われております。
次に挙げられるのは大陸では使わなくなった言葉が台湾では未だに使われている事です。
●例2
| 台灣 | 大陸 | 日本語参考 |
| 百貨公司 | 百货商场 | デパート |
| 國小 | 小学 | 小学校 |
| 國中 | 中学 | 中学校 |
| 警察局 | 公安局 | 警察署 |
| 福利社 | 小卖部 | 売店 |
| 郵差 | 邮递员 | 郵便配達員 |
| 請願 | 上访 | 地方の人が中央を訪問、直訴すること |
| 高就 | 上班 | 仕事をする、勤める |
社会体制、制度や意識の違いによって、用語も変わっていくのが当然のことです。
更に、「普通話」は「北方の方言を基準に、北京語の音声を基本」と定義されているものなので、北の方言を標準としているのに対し、台湾の国語には南方の方言が多く存在しています。台湾には、福建や広東地域の出身の人が多く、自然に方言の一部も国語に取り入れられるようになっています。
●例3
| 台灣 | 普通話 | 日本語参考 |
| 單車/腳踏車 | 自行车 | 自転車 |
| 不曉得 | 不知道 | 知らない |
| 公仔 | 娃娃、孩子 | 子供 |
これらは、実は大陸の「南方」(秦嶺、淮川より南の地域)のところどころでも使われています。
これらに加え、現地の台湾語、また英語や日本語の単語も台湾の「国語」に取り入れられ、特に日本語の影響が大きいです。
●例4
| 台灣 | 普通話 | 日本語参考 |
| 3號電池 | 5号电池 | 単三電池 |
| 4號電池 | 7号电池 | 単四電池 |
| 宅配 | 快递 | 宅配 |
| 優格乳/優格 | 酸奶 | ヨーグルト |
| 剉咧等 | 颤抖着等待 | 震えながら待つ |
勿論、70年間の歳月に渡って、様々な新しい事、物が生まれてきたので、台湾と大陸において異なるネーミングをしていることも大きな違いです。
●例5
| 台灣 | 大陸 | 日本語参考 |
| 電腦 | 计算机 | PC |
| 隨身蝶 | u盘 | USBメモリースティック |
| 部落格 | 博客 | ブログ |
| 網路 | 网络 | ネット、インターネット |
| 捷運 | 地铁 | 地下鉄 |
などが挙げられますが、昨今、インターネットの普及や台湾企業の大陸進出、台湾への大陸の観光客の急増、大陸作家の書物が台湾で発売されるなど、交流が盛んになるにつれ、言葉の理解と共用が日に日に進んでいるのも事実です。
繁体字について、大陸では今でも図書館や自宅にある古い本を読めば、繁体字で書かれているので、触れるチャンスがたくさんあります。
最後に、広東語と上海語ですが、両都市とも世界的規模な大都会なので、無視できない存在です。が、小中学校の義務教育では、北京や天津などほかの都市と同じ教材を使っています。ダイアローグは違っても、文章用語は同じです。
中国語は違う民族、違う制度の下で、違う背景を持つ人々に話されているので、中国人自身も「南腔北调(南と北の方言で)」と、うまく聞き取れない場合があります。そして、言葉は生きているもので、人間の移動や交流により、変化しています。中国語を勉強する日本人の皆さんは簡体字と繁体字の両方を学び、柔軟に多様な中国語を受け入れてみてはいかがでしょうか。
ビジネスコミュニケーションコースの授業では、簡体字と繁体字の両方を取り入れ、音声教材も生の中国人が話すものを使っています。
●今月の中国語新語
「零首付」: 不需要首付款便可接收银行贷款。(頭金なしで融資を受けられること)
・例1
零首付购车。(頭金なしで自動車を購入する。)
・例2
零首付购房。(頭金なしで家を購入する。)
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張 意意
証券会社、コンサルティング会社で通訳・翻訳者として活動するとともに、アイ・エス・エス・インスティテュートで「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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●中国語ビジネスコミュニケーションコース●
コース案内動画はこちら
※張意意先生からのメッセージもありますので、ぜひご覧ください!
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