中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)
2015.10.06
スキルアップ
第1回「贈り物」
2015年10月より新しい連載がスタートします。ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生が執筆します。すぐに使えるフレーズがたくさん詰まっていますので、みなさまのお役に立つこと間違いなしです。どうぞお楽しみください。
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お土産を送ったり、もらったりする時、中国語でなにを言えばいいのか、困ったことはありませんか。
中国でも親戚や友人、家族間の祝日の挨拶、集まり、冠婚葬祭、久しぶりの再会などプライベートでの付き合い、企業団体間や祝典、交流、社員表彰などの公の行事、様々な場面においてお土産を送ったり、もらったりします。
古くから「千里送鸿毛,礼轻人意重(遠くからはるばるつまらないものを送ることは情が大事だから)」、「雪中送炭(真冬の暖炉)」など、贈り物は情の価値にあり、のような例えがあります。つまり、中国では古くから品物そのものよりもそれに含まれている意味に意義があると強調されてきました。品物の形を通じ、友情を深め、関係を親密にさせます。
日本では7月頃は「お中元」、12月に入ると「お歳暮」が贈られる時期になり、百貨店やスーパー、コンビニ、個人商店などで売り上げを伸ばす最高の季節として重要視されています。しかも、行列ができるほどの大盛況。ご無沙汰している人への挨拶、普段お世話になった人への感謝をこめて贈ります。旅行に行った際には旅先の特産などを贈るでしょう。御菓子、または小物や芸術品など、相場がなくてあるようなものです。
贈り物をするときの習慣は、中国と日本は同じです。例えば、贈り物にお金を添える場合はお金の包みをお茶やお菓子の下に置いて渡したりするでしょう。ですが、やはり中国と日本では文化が異なります。特に、贈り物のやりとりにおいての言葉の表現には、かなりの温度差があります。
例えば、日本人は謙虚に、
「つまらないものですが、よろしければどうぞ」
「いただいたもので、おすそわけでも」
「お口に合うかどうかわかりませんが、よかったら」
「なにもなくて、申し訳ございません」
など、決して自分の物を褒めたり、気持ちを丸出しにして相手に押し付けることはありません。
ですが、一方で、中国人の場合ですと、よくあるのが、
「这个东西是我特意给你买的。」(これは、わざわざあなたのために買ったのよ。)
「这玩意儿对健康特别好。你一定试试。效果可好了。」(これは健康に非常にいいので、ぜひ、試してみてください。効果抜群ですよ。)
「这可不好买了。我跑了好几个地方才买到。」(これはなかなか手に入らないもので、あっちこっち探し回って、手に入れたのよ。)
「这可是当地最有名的。」(これは地元でもっとも有名なものですよ。)
「这可不是便宜东西。别小看它。」(これは安くないですよ。軽く見てはだめです。)
など。
さらに、よく見ればわかるように、そこまで価値がないものを特別に意義があると強調するケースが多いです。却って、本当に高価なものや、実際に苦労して選んだものを送る時は、謙虚で控えめに言うことが多いです。
例えば、
「一点小意思,请您笑纳」(些かなものですが、ご笑納ください)
「您千万别在意。没什么了不起的。只是一点心意吧了。」(ほんの気持ちです。大したものではありません。)
「也不知道您喜欢不喜欢。(不知合不合您的口味),尝个新鲜罢了。」(好きかどうか(お口に合うかどうか)分かりませんが、よろしければ旬なものをどうぞ。)
「顺便带了些土特产,没什么好东西。」(ついでに買ってきたもので、大したものではありません。)
など。
それに、
「一点小意思,只是意思意思罢了。」(ほんの気持ちなので、気になさらないでください。)
のような曖昧な言い方もあります。
このように、贈り物をすることでしっかりとお礼を伝えたい時は、相手に負担を感じさせないため、物より気持ちを強調し、物の実際の価値を格下げして表現します。
贈り物の側面からも、中国人の物事を対処する方法論的なものが表れています。それは「摆平(バランスを取る)」ということです。陰と陽の太極図が示すように、「物极必反」(物が極端に至ると、反対方向に行ってしまいます)。つまり、何事でもほどほどがいいという「中庸」の思想です。どちらか片方だけではバランスが良くありません。
謙虚が良いと単純に思い込んで、低姿勢で接していると逆効果になってしまう場合もあります。せっかく選んだお土産なのに、言葉一つで相手の気分を損なうことになってしまったらすべて台無しです。
なので、中国語を勉強するということは、単に日本語の置き換えではなく、中国の文化や哲学、中国人の考え方やロジックをしっかりと身に付けなければなりません。
最後ですが、贈り物をする時、真心の他に一定の決まりもあります。例えば、恋人同士には「梨(li,離と同じ発音)」、お年寄りには「鐘(時計/zhong,終と同じ発音)」を贈らないことなどがあります。色合いも、ヨーロッパでは白を好みますが、中国では白はお葬式などに使われ、黒は恐怖や悪を示します。中国人にとってはゴールドや赤が吉を意味し、好まれます。
紙面が限られているのでここまでにしますが、中国語のニュアンスなどさらに興味が湧いてきた方は、ぜひクラスにいらしてください。
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張 意意
証券会社、コンサルティング会社で通訳・翻訳者として活動するとともに、アイ・エス・エス・インスティテュートで「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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●中国語ビジネスコミュニケーションコース●
コース案内動画はこちら
※張意意先生からのメッセージもありますので、ぜひご覧ください!
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