ISSライブラリー ~講師が贈る今月の一冊~
2020.10.02
スキルアップ
第52回:柴原智幸先生(英語通訳)
先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー。
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月は、英語通訳者養成コース講師、柴原智幸先生がご紹介する「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」(ヤニス・バルファキス著, 関美和(翻訳), ダイヤモンド社, 2019年)、「読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術」(田中泰延著, ダイヤモンド社, 2019年)です。
※連続4回にわたり、柴原智幸先生のおすすめ本をご紹介。今回が4回目です。
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(※本文は7月掲載、8月掲載、および9月掲載の続きです。)
・「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」 ヤニス・バルファキス 著 ダイヤモンド社
貧しい人がいる一方で、金持ちや権力者(といってもだいたい同じ人たち)が、自分たちがもっと豊かになるのは当然だし必要なことだと信じ込むのは、そんな心理が働くからだ。
しかし、金持ちを責めても仕方がない。人は誰でも、自分に都合のいいことを、あたりまえで正しいと思ってしまうものだ。
それでも、君には格差が当たり前だとは思ってほしくない。
いま、重大の君は格差があることに腹を立てている。もし、ひどい格差があっても仕方ないとあきらめてしまいそうになったら、思い出してほしい。どこから格差が始まったのかということを。
赤ちゃんはみんな裸で生まれてくる。高価なベビー服を着せられるあかちゃんがいる一方で、お腹を空かせ、すべてを奪われ、みじめに生きるしかないあかちゃんもいる。それは赤ちゃんのせいではなく、社会のせいだ。
君には、いまの怒りをそのまま持ち続けてほしい。でも賢く、戦略的に怒り続けてほしい。そして、機が熟したらそのときに、必要な行動をとってほしい。この世界を本当に公正で理にかなった、あるべき姿にするために。(pp.43-44)
とまあ、頼もしい虎さんたちに並んでいただきました。改めて壮観だなあ、と思います。さて、最後になりますが、もう一頭ご登場いただきましょう。
・「読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術」 田中泰延 著 ダイヤモンド社
まず「白いうさぎ」と最初の人に耳打ちして、200人に耳打ちでリレーしてもらう。(中略)ほぼ最後の200人目から「白いうさぎ」という答えが返ってくる。(中略)
次に「甘くて赤くて美味しいリンゴ」と耳打ちすると、これがおもしろいくらい伝わらない。(中略)
1秒以内しか接触してもらえない、接触後に興味を引いて最後まで見てもらっても15秒しかないCMの中では、伝える情報はCM1つにつき1つだけにする。2つにするとそれぞれは半分以下しか伝わらない可能性がある。(pp.74-75)
……とすると、情報を延々と列挙しただけの私の拙文は、情報はほとんど伝わらない、ということになるわけですが(笑)。どれか1冊でも構いません。実際に手に取って読んで、願わくは「取り込む」努力をしていただければと思います。
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柴原 智幸(しばはら ともゆき)
上智大学外国語学部英語学科卒業。英会話講師、進学塾講師、フリーランス通訳者を経て、英国University of Bath大学大学院通訳翻訳コース修了後、BBCに放送通訳者として入社。2011年より2017年まで、NHKラジオ講座「攻略!英語リスニング」講師。現在は大学講師、NHK放送通訳者・映像翻訳者として活躍中。
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