背中を押し続けてくれた 継続は力なり!
2015.01.05
通訳
第1回:背中を押し続けてくれた「継続は力なり!」
はじめまして、石黒弓美子と申します。ISSの卒業生です。通訳を職業としてからおよそ30年。とはいえ、技術の完成感からは程遠く、今も上を見ながらの毎日ですが、それでも今或いはこれからスタート地点に立とうという方々には、今だからお伝えできることもあるかもしれません。そう思って、お引き受けしたコラムです。これから1年間、少しでもお役に立つ情報をお伝えできれば幸いです。
「青い目の婿さんだけは勘弁してくれ」との父の願いに反して、青い目の婿殿ばかりか、子連れでアメリカ留学から帰ってきたのははるか昔です。その頃は、夫が日本人であれば外国人の妻は、同伴者として日本に入国できましたが、その逆、つまり妻が日本人の場合は、外国人の夫は労働ヴィザか学生ヴィザをとらなければ家族と共に入国もできないという何とも不公平な時代でした。仕方なく夫は日本語学校の学生としてヴィザをとって入国しましたが、働くことが許されませんでした。一歳の子連れでは、私も働くことがままなりません。夫の両親からの仕送りに頼った貧乏暮らしでした。
それでも、そもそも留学を決意したのは、通訳になりたかったからなのです。留学前、大学受験に失敗した後、英会話学校で英語の勉強を続け、通訳のような仕事も少しばかりするチャンスがありましたが、プロにはとても太刀打ちできる英語力ではありませんでした。その頃教えて下さっていた先生に、他の仕事を紹介されたこと(つまり「通訳になるのは無理」と引導を渡されたこと)が、留学を決意させてくれました。「絶対に英語力を強化するぞ!!」という決意で、夢は将来の会議通訳者でした。
帰国後、フライパンと鍋を一つガスにかけたら、他に物を置く場所もないという小さなキッチンと二間のアパートで子育てをしながら、改めて通訳訓練を受けるチャンスはないかと毎日、新聞を見ていました。ある日「成績優秀者に授業料の一部を奨学金として提供」という広告が目に飛び込んできました。それは、老舗通訳養成学校の一つ、ISSでした。今の私があるのは、その奨学金のおかげでもあるのです。
そして、もう一つは、ISSの入学式で当時の筆谷社長が受講生に送ってくれたことば、「継続は力なり」です。授業は毎週木曜日の午後でした。子どもを保育園に預け、授業に出席。終わると、子どもを迎えに走って帰りました。それから、夕飯の買い物、食事の支度、子どもに食事をさせて、お風呂に入れ、寝かしつけてからが、やっと自分の時間です。ヘッドフォーンをつけて通訳の練習をするのですが・・・。それでも自分に言い聞かせることができました。「あせるな、くさるな、継続は力なり!」卒業後も、様々な局面でくじけそうになった時、背中を押し続けてくれたのが、この言葉でした。

会議通訳・NHK放送通訳者
USC(南カリフォルニア大学)米語音声学特別講座終了。UCLA(カリフォルニア大学ロサンジェルス校)言語学科卒業。ISS同時通訳コース卒業。國學院大學修士号取得(宗教学)。NHK-Gmedia国際研修室講師・コーディネーター。東京外国語大学等で非常勤講師。発音矯正にも力を入れつつ通訳者の養成に携わる。共著:『放送通訳の世界』(アルク)、『改訂新版通訳教本 英語通訳への道』(大修館書店)、『英語リスニング・クリニック』『最強の英語リスニング・ドリル』『英語スピーキング・クリニック』(以上 研究社)など
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