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ISSについて about

編集後記

50周年記念インタビュー編集後記

創立50周年記念事業として、設立から黎明期に携わった諸先輩方、事業運営を軌道に乗せるためにご尽力くださった方々、事業の基盤である学校を支え続けてくださっている先生方、創業時のISSのために通訳者としてお手伝いをいただいた諸先輩方、ISSでの通訳訓練がきっかけとなってその後の事業基盤を築かれた方々、ISSの海外事業展開の礎を築いてくださった方、ISSの派遣事業の基盤をつくってくださった方々、様々な諸先輩方よりお話を伺い、設立経緯や生い立ち、そして50年という時間の重みを今回のインタビューを通じて感じることができた。創業当時を知らぬほとんどの現社員も創業の志を知る上でどれも貴重なお話であった。YMCAから5か国語の同時通訳を含む国際会議を受注した際に、社員が「同時通訳って何?」と通訳の存在さえも知らなかったことからスタートし、通訳者育成事業から会議運営ビジネス、通訳・翻訳、そして人材ビジネスへと事業を展開してきたこと、まさに日本の高度経済成長の過程で、国際コミュニケーションを切り口として、世界に認められる大国「日本」の基盤をつくるお手伝いを多少なりともできたのではと思う。そうした意味でISSという会社が抱える社会的な意義の大きさをこのインタビューを通して再認識することとなった。

この50年でISSを含めた通訳エージェントが行ってきたこと、それは「日本における会議通訳者の育成と社会的ポジションの確立」ではなかっただろうか。通訳エージェントを介した業界の発展の文化は日本特有のもので、欧米では高等教育機関が育成を行い、その後は通訳者が通訳を必要とする会社や組織と直接的に取引を行い、所請仲介業者が育つ文化が存在しなかった。然るに、会議通訳者の団体であるAIIC(国際会議通訳者協会)のような通訳者協会が欧州で発足し、通訳者団体でその労働条件や資格等の枠組みを作ることによって通訳者が自分たちで自分たちの社会的ポジションを確立するという歴史を辿ってきたのであった。日本におけるエージェントは、通訳者の育成を行い、通訳の営業を通訳者に代わって行うだけでなく、事前情報を収集し、通訳者の労働条件、通訳体制、通訳環境の確保といった役割を果たしてきた。また、高度経済成長の中、終身雇用や年功序列といった日本的経営が雇用の安定を保障してきた時代に、派遣からフリーランサーへとつながる独自のキャリア形成を構築することにより、雇用の多様化・流動化の促進にも寄与しただけでなく、そもそも女性が圧倒的に多い通訳という職種を扱い、そしてエージェントに必要とされる特有の細かな気配りから社内のコーディネーターをほとんど女性が占める現実をみると、業界全体で女性の社会進出の支援をサポートしてきたといっても過言ではないであろう。

日本を訪れる外国人が2014年には1340万人を超えた。更に年間2000万人を目指した観光立国化のプロジェクトが政府主導で進んでいる。街を歩くと確実に外国人の存在が顕著になってきたことを実感する。そうした外国人を受け入れるインフラ整備が進む中、コミュニケーションの問題が更に拡大することは間違いないであろう。法律、医療、ソーシャルサービス等の場面で活躍するコミュニティー通訳の需要も拡大傾向にある。2020年のオリンピックに向けて、民間レベルでの異文化コミュニケーションも盛んになるであろう。

国際社会でのアジアの存在が更に膨らむ中、アジア太平洋地域の中心が日本からシンガポール、中国や韓国等の他国へ移りつつある。この先日本が更に強さを発揮してゆくには、個々人のグローバル化が必須条件となるであろう。その際にもっと多くの若者がコミュニケーションツールである語学に興味をもって、日本人の語学レベルの底上げが実現し、更に専門性の高い技術職として通訳を目指す人口が増加することが期待される。

50年という節目を迎え、これから未来のISSに求められるものは何だろうか。創業のきっかけとなったコンベンション事業の将来を見据えた事業展開や、教育の観点でいえば、通訳訓練の手法を用いた総合的語学力の向上、通訳分野の更なる専門化に応える専門特化型コースの確立や、通翻訳を中心とした語学スペシャリストのキャリア形成のステップとしての派遣の拡充も必要となってくるであろう。昨今のインターネット等のインフラ活用による通翻訳者とエンドユーザーを結ぶダイレクトソーシングが進む中で、ユーザーをはじめISSのパートナーにとって欠かすことのできない存在であり続けるために日々努力を重ねてゆかなければならない。

最後に、今回の企画にご賛同をいただき、お忙しい時間を割いてくださった諸先輩方に深く敬意を表するとともに、社員が諸先輩方の熱い思いを継承し、決して創業の志を忘れることなく、新たな50年に向かってその存在意義を認識し、お客様、通訳者、パートナーの皆さんに最大限の価値を提供し続けてゆけるよう邁進してゆきたい。

2015年12月
株式会社 アイ・エス・エス
経営企画室 白木原 孝次