中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)
2020.06.04
スキルアップ
第57回 「ノートルダムー・ド・パリ(李玉民訳)」
ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生に執筆していただいています。どうぞお楽しみください。
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今回は私の好きな一冊、フランスの作家であるユゴー作「ノートルダムー・ド・パリ」の李玉民訳をおすすめしたいと思います。名作はもちろん原文で読むのが一番ですが、言語の限界がある以上、翻訳本を介して楽しむことしかできません。ところが、これほどの名作になると、たくさんの翻訳本が売られています。訳された年代が違っても、それぞれその年代の人々に親しまれる言い回しを使って、翻訳者たち自身の理解と文章力で原文のすばらしさを見せてくれます。
「ノートルダムー・ド・パリ」の中国語版はたくさんあります。ここでは4冊を挙げ、その冒頭を少しご紹介します。
李玉民の訳本:
话说距今三百四十八年零六个月十九天前,那日巴黎万钟齐鸣,响彻老城、大学城和新城三重城垣,惊醒了全体市民。
陳敬容の訳本:
巴黎人被旧城区、大学区和市民区三重城垣里一片轰鸣的钟声惊醒的那个日子,距离今天已经有三百四十八年六个月零十九天了。
安少康の訳本:
三百四十八年六个月零十九天前,巴黎老城、大学城和新城的三重城垣内钟声大作,市民们从睡梦中惊醒。
施康強、張新木の訳本:
距今三百四十八年六个月零十九天,巴黎万钟齐鸣,旧城、大学城和新城三重城垣中的市民个个惊醒。
参考までに、辻昶・松下和則訳(岩波書店2016年)も併記します。
今から三百四十八年六カ月と十九日前のことだが、パリの市民は中の島、大学区、市街区をとりまく三重の城壁の中で、いっせいにガンガンとなりだした全市の鐘の音で夢を破られた。
上記の中国語版4冊は、どれも書店で売られている素晴らしい翻訳本ですが、私の好きな一冊は李玉民先生の訳です。翻訳本を手にとり、ページをめくり、「话说距今・・・」の出だしで一気に引き込まれます。訳文だと感じさせない、人を惹きつける一冊です。なぜなら、このような語り方は典型的な中国の物語の始まり方だからです。もちろん、本文の言い回しもとても魅力的です。ぜひ、お時間があれば、読んでみてください。
また、翻訳者のだれもが、常に、いい訳文とはなにか、どのようにすればもっといい訳を作ることができるのかと、求めているものだと思います。自分の語学力と表現力を磨くと同時に、名作の異なる訳本を読み比べるのも、ためになるのではないかと思います。
では、次回は、中国武術の一つである「太極拳について」ご紹介したいと思います。ご期待ください。
●今月の中国語新語:
有料:有高度深度,有水平的意思。
(レベルが高く中身があることを意味します。)
例:此次论坛大会十分有料。欢迎大家踊跃参加。
今回のフォーラムは非常にレベルが高く、内容が充実していますので、奮ってご参加ください。
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張 意意
ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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中国語ビジネスコミュニケーションコース
コース案内動画はこちら
※張意意先生からのメッセージもありますので、ぜひご覧ください!
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