中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)
2022.11.02
スキルアップ
第86回 「『固定観念について』から、『決まった言い回しを身につけよう』へ」
ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生に執筆していただいています。どうぞお楽しみください。
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まず、お詫びしなければなりません。というのは、早々にテーマを決めたものの、一旦書こうとすると、「固定観念」のタイトルは大きすぎて、とても、短時間、千文字ぐらいで、まとまるものではないことに気がつきました。やはり、日常の小さいことを書こうと思います。今回は「文不对题(脱線)」となりました。
今回のテーマは、「固定観念」ではなく、「決まった言い回しを身につけよう」にしましょう。これは日本語を勉強する中国人にはかなり難しいところで、私だけではなく、大多数の日本語学習者が悩んでいるのではないでしょうか。
例えば、「茶」。
日本語には「茶」、「お茶」、「ティー」が同時に存在し、それぞれ意味が違います。
「お茶」は日本茶、緑茶のことで、使う器も取っ手がない湯飲み茶わんです。ここでの「お」は敬語の「お」だけではなく、「茶」を「緑茶」に限定した、決まった「约定俗成(暗黙の了解)」の使い方です。一方、ティーは西洋の紅茶やハーブティーなど、ティーカップを使用します。「茶」だけが中国語の「茶」と同じような使い方で、つまり、「茶」全般をさします。それに修飾詞の「紅、黒、白、緑、ウーロン」などを付けて、茶の種類を表します。
ということで、「喝茶」を「お茶を飲む」と訳してはいけません。
しかし、「让我们一起去喝茶好吗?」を「お茶でも行きませんか」と訳すのはOKです。ここでの「お茶」は日本茶のことではなく、カフェか喫茶店かに行く動作を意味します。
同じように、お肉と言うと、日本語では、「牛肉」、「豚肉」、「鶏肉」など陸で育てられた動物の肉のことで、「魚肉」が含まれていません。日本人に「肉が好きです」と言うと、「お魚は嫌いですか」と反問されたことが何回もありました。急遽「お魚も好きですよ」とその場ではフォローアップできましたが、後になって、「なんでこうなるの?魚肉だって肉じゃないか。」と不思議に思いました。
同じ漢字を書いても、中国語と日本語の意味が微妙に違うケースはほかにもたくさんあります。また、単語以上に、言い回しの違いはさらに難しいと思います。
例えば、ご近所とほぼ毎日一緒に犬の散歩をしていますが、たまに用事があって、一緒に行けない時、私の場合は、
「明日、マンションの理事会があって、私は今度の理事ですから、理事会に出なければならないので、お散歩には行けないです」のように細かく理由を述べ、行けないことをはっきりというのに対し、日本人の場合は「明日は予定があって、お散歩には行けないかもしれません」とあいまいな言い方をします。
「予定」にはすべての用事が含まれているし、「かも」という不確定詞を用いた当たり障りのないどっちでもとれる言いまわしです。もし、このまま中国語に直訳して中国人の友達に言ったら、恐らく「有话直说,别跟我打闪(具体的に何の用?はっきり言ってよ!)」と言われるでしょう。
私のように、中国人の物事の考え方ではっきりと表現する場合は、中国人には伝わるだけではなく、親しみさえ感じられます。なぜなら、友達である以上、隠し事などは必要ないと、具体的な理由を教えてもらって信頼されていると嬉しく思うからです。が、日本人には「偉そうに」、「押しつけがましい」と感じとられたことでしょう、と反省しています。私の言葉に対する返事は「すごいですね!」だったからです。
コミュニケーションをうまくとるには、相手の使う言葉で話すだけではなく、相手の言い方、言い回しを身につけることがもっとも大事ではないかと思っております。
次回は「猫好きのための中国語」についてお話したいと思います。ご期待ください。
●今月の中国語新語:
黑暗料理:出自日本动漫《中华小当家》指经营到夜晚的小吃摊大排档,也作为一种幽默的自嘲说法,形容初学者或者厨艺一般的人做出的卖相不佳的菜肴。还用于特指某些令人无法下咽的材料或特殊作法做出的食物。
黑暗料理:漫画「中華一番」にある表現。夜中まで開店している屋台の料理。或いは料理の初心者が自嘲気味で、自分の作った料理のことを言う。また、奇抜な食材や作り方で作った料理のことを言う。
例:烹饪网站推出黑暗料理食谱,吸引人的眼球。
例:料理サイトが黒暗料理の作り方を掲載し、注目されている。
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張 意意
ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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