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中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)

2023.10.04

スキルアップ

第97回 「私が愛読する一冊(その1)」

第97回 「私が愛読する一冊(その1)」

ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生に執筆していただいています。どうぞお楽しみください。
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読書の秋ですね。今回からは私が好きな本を何冊かご紹介したいと思います。

一冊目は、「蒋勲説文学」の上下2巻、「从《詩経》到陶渊明(詩経から陶淵明まで)」と「从唐代散文到現代文学(唐代の散文から現代文学まで)」です。

蒋勲は1947年に西安に生まれ、台湾で育った画家、詩人、作家です。

幼少期にしっかりと身につけた中国文学の基礎に加え、パリ大学で西洋美術を研究したことから、蒋勲氏が語る中国文学史は東洋と西洋の両方の美意識を踏まえ、客観的な目で解釈し、独特な角度から中国古典文学の美しさを教えてくれます。

それでは、「詩経」にある「女曰鶏鳴」ー「与子偕老,莫不静好」の最初の文の解釈を一緒に見てみましょう。

原文:「女曰:“鶏鳴。”士曰:“昧旦。”“子興視夜,明星有爛。”
蒋勲氏の解釈:民間で伝えられる詩—「女曰鶏鳴」は、登場人物が大自然に溶け込んだように、周や商という時代に縛られず、ただただ、地球に生きる一人の人、満天の星を眺めて生きる人、政権が幾つ変わっても、どのような歴史的な変遷を経ても、ただ一人の人間としての物語です。
なぜ民間文学にこれほど大きな影響力を持っているかというと、文学は狭い国家意識に束縛されないからです。
また、よくこの歌は新婚夫婦の愛を語っていると教えられますが、愛は新婚さんに限ることはありません。普通に夫婦と解釈した方がより妥当でしょう。
ある日、一緒にベッドで寝ている夫婦が朝を迎えました。奥さんが「ニワトリが鳴いたよ」と言いました。農耕社会では、人々はニワトリの鳴き声に敏感です。ニワトリの鳴き声が夜明けを知らせてくれるからです。夜が明けると、畑に行く時間となります。ところが旦那さんはまだ起きたくない、「まだ暗いよ“昧旦”」と言います。“”は日の出のこと、“”はまだ日は昇ってないことを言います。
夫婦二人は意見がわかれたので、一緒に外に、日が出ているかどうかを確かめに行こうとしました “子興視夜”。夫婦がベッドから起きて、外にでました。すると、外には、満天の星“明星有爛”でした。この場面は非常に綺麗です。農耕社会に生きる人々は実際に生活する時代と関係なく、大自然に親近感を持っています。現代の我々も大自然と離れることはありません。例えば、太鲁阁に流れ星を見に行くと、同じような“明星有爛”の景色を目の当たりにすることができます。

このように、蒋勲氏は難しいとされる古文をたんたんと、どこにでもある我々の日常生活の一幕と重ねて説明し、共感を引き出してくれます。

上下二冊で、時間軸にそって、各時代の典型的な詩人、歌人と名文を解説、分析し、お互いの繋がりと互いに与える影響、歴史的な盛衰の必然性などを優しい文でわかりやすく説明しています。蒋勲氏の授業を自ら受けているような感覚で、古代中国文学の名作に感動しながら楽しく文学史をおさらいすることができます。

「古典なんて、難しすぎる」と、古文に触れることを恐れている方には、この「蒋勲説文学」をお勧めします。古典を読むことは、現代文への理解と活用に大きく役立つと思います。ぜひ、トライしてみてください。古人の知恵、漢文の力、表現の美しさに感動するに違いありません。

次回は引き続き「私が愛読する一冊」をご紹介したいと思います。ご期待ください。


今月の中国語新語:
普信男:脱口秀中产生的网络用语,指普普通通却非常自信的男人。对女生品头论足。

普信男: トークショー番組から生まれたネット用語。ごく普通なのに、女性の外見や性格などを、かれこれと些細なことにけちをつける自信満々の男子のことをいいます。

例:
普信男大多其貌不扬却自感仪表不凡、才疏学浅却自以为是,最大特征是拥有极度的自卑心理。

普信男の多くは、美しいとは言えない顔をし、才能も学識もないのに、自分がカッコいいと自己意識が過剰で、極度にコンプレックスを持っています。
 

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張 意意
ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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