中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)
2024.09.04
スキルアップ
第108回 「中国語と日本語の考え方の違い」
ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生に執筆していただいています。どうぞお楽しみください。
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一般的に、翻訳文の中国語の文字数は日本語より2割ぐらい少ないと言われています。中国語には送り仮名などがないこと、同じ日本語でも、漢文で表すと文字数が少なくなることからだと考えられます。実務上、外来語の少ない文章にはほぼ当てはまります。
日本語と中国語の両方を日々使っていると、意識的にか無意識的にか、常に両者を比べてしまいます。すると、日本語の極端に省略された表現に対し、中国語がくどいほど細かいことに、ときに驚くことがあります。つまり、中国語には、はっきりと言う要素が多いのです。
例えば、大衆レストランで、注文したチャーハンが出来上がった時、中国語の場合は「这一盘儿炒饭是谁点的?(この一皿のチャーハンを注文したのは誰ですか)」と聞かれるのに対し、日本語の場合は「チャーハンはどなたでしょうか?」と、数量詞や動詞が一気に省略されてしまいます。さらに、大人数の場合には、中国語ではちゃんと「这两盘(二皿)或いは这三盘(三皿)」と人数分を数えますが、日本語では数量詞が省略された言い方のままで変わりません。
丁寧なビジネス文章の場合も同じです。
例えば、「お手数ですが、ご確認お願いします」を中国語に訳すと「给您添麻烦,请确认以上内容并回复」より「请您百忙之中确认以上内容并给予回复为盼」と「お忙しい中」を付け加えた方がより自然です。
日本語では、特に話し言葉において、いちいちはっきりと言わない傾向があります。相手の気持ちを察しながら、独特な「あうん」で通じたところで止まるのが礼儀かもしれません。一方、中国語では、いちいちはっきりと言って辻褄を合わせることが求められるため、曖昧模糊なままでは誠意が伝わらないのです。
「翻訳は単語の置き換えではなく、意味を訳すことだ」とよく言われますが、それはつまり原文がどのような考え方、気持ち、ニュアンスを聞き手に伝えようとしているのか、それを訳語の一般的な言い回しで表現することだと思います。そのために、同じ場面で使われる、それぞれ異なる言語のいろいろな表現を、できるだけたくさん身につけましょう。
次回は、「中国語と日本語の翻訳でよく間違える単語」についてお話したいと思います。ご期待ください。
●今月の中国語新語:
信息蝉房:也叫网络蝉房,来自英文Information Cocoons。指习惯性地被自己的兴趣所引导,从而将自己的生活桎梏于像蚕茧一般的“茧房”中的现象。
情報の繭(インフォーメーションコクーン):情報社会で、ついつい快適なものを選んで、喜ばせてくれるものだけに触れる世界に閉じこもることを指します。
例:
伴随网络的发达,人与人之间直接接触交流机会逐渐减少,人在网络上选择信息的自由度随之加大,很容易自制信息茧房,脱离整个社会的发展,这些都大大减少了经验的分享。(摘自百度)
ネットの発達につれ、人と人の直接交流が減り、ネットで情報を選択する自由度が高まる一方で、情報の繭に入る状態に陥る可能性が大きくなり、社会から離脱し、経験をシェアする場面がどんどん減っていってしまいます。(バイドゥより)
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張 意意
ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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