中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)
2025.08.02
スキルアップ
第119回 「古典を読んでみましょう」
ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生に執筆していただいています。どうぞお楽しみください。
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少しハードルが高くなりますが、中国の古典を原文で読んでみましょう。
特に、翻訳者をめざす人、書き言葉を勉強したい人にお勧めです。
現代文も難しいのに古文だなんて、と躊躇する人がいるかもしれませんが、四字熟語の出典など、面白いストーリーから始めれば、意外に簡単に読めると思います。
実際、私たち中国語ビジネスコミュニケーションコースでは、今学期、毎週違う古文を一つ読んでいます。
「漁夫の利」として日本語にもよく出てくる言葉の出典の例:
鹬蚌相争 《战国策·燕策》
赵且伐燕,苏代为燕谓惠王曰:“今者臣来,过易水。蚌方出曝,而鹬啄其肉,蚌合而箝其喙。鹬曰:‘今日不雨,明日不雨,即有死蚌!’蚌亦谓鹬曰:‘今日不出,明日不出,即有死鹬!’两者不肯相舍,渔者得而并禽之。今赵且伐燕,燕赵久相支,以弊大众,臣恐强秦之为渔父也。故愿王之熟计之也!”惠王曰:“善。”乃止。
昔、趙の国が燕の国を討伐しようとしました。蘇氏が燕の国の代わりに、趙の国の恵王にやめるよう説得に行き、次のように言いました。「ここに来る途中、易水という川辺でこんな光景を見ました。一羽の水鳥がハマグリ食べようとくちばしを差し入れたところをハマグリの貝殻にしっかりとくわえられました。水鳥は『今日も明日も雨は降らない、お前は死ぬのだ!』と言いました。すると、ハマグリは『今日も明日もお前はくちばしを抜くことができない、死ぬしかないのだ!』と言い両者がお互いに譲らないところ、一人の漁師が通りかかり、水鳥とハマグリを一遍に持っていきました。このように、趙の国と燕の国が戦えば、漁師のような一番強い秦の国に趙と燕の両国とも敗れる恐れがあります。それ故、王様、熟考したうえで行動しましょう。」話を聞いた恵王は「いい話だ」と言って、討伐を止めました。
この熟語は両者が争っているところにつけこんで、第三者が利益を横取りするリスクがあるというビジネスの場面でも使える有効な言葉です。長い年月を経て洗練された美しい古文は、言葉だけではなく、思想、知恵、生き方なども知ることができます。
次回は、「中国語のリズム」についてお話したいと思います。ご期待ください。
●今月の中国語新語:
回首掏:网络语。形容在对手或观众认为局势已定的情况下,突然且令人意想不到的行为,具有极大的震撼力和观赏性。
回首掏(ホイシュウタオ):ネットスラング。話しの相手或いは観客がもう結末だと思ったところで、思いがけない行動を起し、大きな衝撃或いは鑑賞性を与えることを言います。
例:
台上的艺人一个回首掏,博得了全场的喝彩。
舞台に立っている芸人が「回首掏」の特技一発で、会場を沸かせました。
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張 意意
ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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