中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)
2025.11.04
スキルアップ
第122回 「上火(シャンフオ)」
ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム~更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生に執筆していただいています。どうぞお楽しみください。
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A:「早晨起来牙疼。」(朝から歯が痛い。)
B:「上火了吧。」(ストレスだろう/辛い物の食べ過ぎだろう)
A:「最近脸上长痘痘。」(最近ニキビができている。)
B:「上火了吧。」(疲れのせいだろう/夜更かしのせいだ)
A:「有点儿嗓子疼。」(のどが痛い。)
B:「上火了吧。」(乾燥しているから/風邪気味かな)
というような会話を聞いたことがありますか。
「上火」という言葉は実にさまざまな場面で使われている「万能」ワードです。中医学の観点から言うと、体のどこかに「炎症」が引き起こされた意味ですが、使うときのニュアンスによって対訳はケースバイケースなので、一対一の訳語はないと思います。
文字通り、「火」は燃えるイメージ、「上」は罹るという意味です。
ニキビ、口内炎、歯痛、のどが痛い、鼻血が出る、便秘、不眠症、頭痛、イラつきなど、これらの不調の原因のほとんどを「上火了」に帰属しますが、医学用語ではなく、体質や軽い病状のイメージを表現する言葉で日常的に使われています。無責任な言い方といわれてもしかたがありません。
中華思想、中医学では、陰と陽のバランスがもっとも大事です。そのバランスが崩れ、体中を滑らかに巡回するはずの「精・気・血」の一部が一時的に滞り、軽く炎症がおこる状態、あるいは、排泄する毒素が体にたまって、炎症あるいは不具合が現れたことを「火」と言います。その火が体に籠ったことを「上火」と表現しています。
「上火」の誘因は、辛いもの、チョコレート、ナッツ類の食べすぎ、気候が乾燥している、ストレスや疲れが溜まっているなど、日常のすみずみに潜んでいます。
「上火」の対処法として、一般的には、苦みの強いお茶(菊茶、金銀花茶、夏枯草)や食べ物(苦瓜)を摂取すること、また解毒力を持っている緑豆、寒性の果物(例えば梨)を食べるとよいとされています。もちろん、ストレスを発散することや、規則正しい生活を保つことなど、中医学においては、体と精神、生活をトータルケアすることを前提としています。症状が酷い場合は「牛黄解毒丸」などの漢方解毒剤が必要となります。
他には、
「看他我就上火,真受不了。」(彼を見るとむかつく。本当に耐えられない。)
と強烈な情緒を表す時もあります。
「别上火,消消气。」(怒らないで)
と人を慰めたりします。
「上火」、なかなか面白い言葉ですよね。ぜひ、正確に使えるようになって、ネイティブに一歩近づきましょう。
次回は、「犬に関連する中国語のスラング」についてお話したいと思います。ご期待ください。
●今月の中国語新語:
智商税:网络流行语,描述各类非理性消费行为。比喻行为人因缺乏判断力付出的物质或精神代价。受骗上当。
智商税(発音:チーシャンシュイ、直訳:知能税):ネット流行語。過大あるいは偽りの宣伝に煽られ、衝動買いなどの非理性的な消費行為をいいます。つまり、正当な判断力に欠け、物的あるいは精神的な対価を払うこと、騙されたこと。
例:保健品和教育都是交智商税比较严重的领域。
健康食品やサプリメント、また教育は智商税が高い分野です。
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張 意意
ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。
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