1. ホーム
  2. コラム
  3. 新着コラム
  4. 第7回:柴原智幸先生(英語通訳)

ISSライブラリー ~講師が贈る今月の一冊~

2016.11.02

スキルアップ

第7回:柴原智幸先生(英語通訳)

第7回:柴原智幸先生(英語通訳)

先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
-------------------------------------------------------------------
今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、柴原智幸先生ご紹介の「決断力」(羽生善治著、角川oneテーマ21)です。
-------------------------------------------------------------------

どんな本を読むにしても、肝心なのは自分の中にある「問い」だと思います。早速ですが、以下の動画をご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=ubNF9QNEQLA

いかがでしょうか。ついつい英語の聞き取りと謎解き(?)の方に集中してしまったのではないでしょうか?しかし、最初からタネを知っていれば、「では、それを見つけてやろう」と集中してみたはず。見返すと、動画は全く違って見えてくるはずです。動画そのものは何ら変化していないにも関わらず。

ここなのですね、ポイントは。本を読むときにも、「自分は何が知りたいのか」という点を明確にしておくと、引っかかって来る情報が違ってきます。

私が10年ほど前に羽生善治さん「決断力」(角川oneテーマ21)を読んだ時は、「通訳者として生きるとはどういうことなのか」「プロとして生きるとはどういうことなのか」ということをずっと考えていました。すると、そのような「問い」に対応する部分が、いろいろと引っかかって来るのです。

「決断力」は、通訳者について書かれた本でもなければ、プロ論に特化した1冊でもありません。しかし、自分の中の「問い」が明確であれば、いろいろなことが引き出せることを、身をもって体験しました。これは、対象がマンガであれ新聞であれ、またはYoutubeで見た動画であれ、多分なんでも一緒だったと思います。

以下、私が読書ノートに抜き書きしたものの一部をご紹介します。

------------------------------

私は人間には二通りあると思っている。不利な状況を喜べる人間と、喜べない人間だ。(p.19)

お互いに日本語をしゃべっているから意思の疎通ができている、というのは錯覚だ。(中略)どの世界でも、本気で、本音で話し合う機会を持つことは、物事を前に進めるための基本ではないだろうか。(p.151)

報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。(pp.171-172)

どうしても強くなりたい、前進したい、そういう向上心が大本にあり、自分の頭で真剣に考え、ここだけはどうしてもわからない、解決の道が見いだせないというのであれば、師匠や先輩に相談することは決して悪くないと思っている。だが、そうではなく、受け身の姿勢だけでただ教わるというのでは、集中力や思考力、気力といった勝負に必要な総合的な力を身につけることはできないだろう。要は本人がどういう姿勢で教わるかが大事だと思っている。(p.177)

確かに、プロになれば趣味としての楽しさがなくなり、当然、苦しみも出てくる。だが、趣味としていたら多分知ることのなかった将棋の奥深さを味わえるということもある。(p.188)

------------------------------

「問い」と言われても、そうすぐには持てない……という方も、また多いのではと思います。ゼロからいきなり「問い」は生まれるのか、と言ったらそれは難しいですよね。まずはいろいろな考えに触れてみる、つまり大量にインプットしてみることから始まるのではないでしょうか。

ISSライブラリーが始まってから半年、皆さんは紹介された本のうち何冊を読んだでしょうか?読まないまでも入手したでしょうか?ちなみに私は、徳久先生がご紹介なさっていた「資料日本英学史 2 英語教育論争史」が届くのを待っているところです。

1冊も入手していないし、読んでもいない、という方。厳しいことを申し上げるようですが、それは「問いが持てない」のではなく、「問いを持とうとしていない」のではないでしょうか。まず、そこから変えて行きませんか?

さあ、どんな本でも良いです。まずはページをめくってみましょう。手元に本がなければ、部屋のドアを開けて、本を買いに行きましょう。

現在をちょっと変化させることで、未来が大きく変わってくるはずですよ。

-------------------------------------------------------------------
柴原 智幸(しばはら ともゆき)
上智大学外国語学部英語学科卒業後、英会話講師、進学塾講師、フリーランス通訳者を経て、英国University of Bath大学院留学。同大学院通訳翻訳コース修士課程修了後、BBC日本語部に放送通訳者として入社。現在は大学、通訳学校、専門学校で講師を務める傍ら、NHK放送通訳者・映像翻訳者として活躍中。2011年4月よりNHKラジオ講座「攻略!英語リスニング」講師。
-------------------------------------------------------------------

決断力 (角川oneテーマ21)
羽生 善治
角川書店
(2005-07-01)

この記事をシェアしませんか?

背景画像
背景画像

CONTACT

通訳、会議・イベント運営、
翻訳、人材派遣/紹介、
法人向け通訳・翻訳研修などに関するご相談は、
こちらからお気軽にお問い合わせください。
お見積りも無料で承ります。