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ISSライブラリー ~講師が贈る今月の一冊~

2017.07.01

スキルアップ

第15回:藤岡みどり先生(英語通訳)

第15回:藤岡みどり先生(英語通訳)

先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、藤岡みどり先生ご紹介の『なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか』(伊藤剛著、光文社新書、2015年)です。
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よく言われるように、21世紀はインターネットの発達による情報革命の時代です。

私が学生の頃、英単語を調べるのに紙の辞書を使うのは当たり前でしたが、その後瞬く間に紙の辞書は電子辞書にとって代わられ、さらに今の学生さんたちは専用の辞書さえ持たず、スマートフォンで素早く検索しています。その姿は、前世紀後半を生きてきた私などにはまさに隔世の感があります。

21世紀になってわずか17年。考えてみれば、信じられないような変化のスピードです。

英単語に限らず、インターネットという道具が登場したことで、あらゆる情報検索の速度が大幅に上がったことは間違いありません。

では、大量の情報を容易に、かつ瞬間的に得ることが出来るようになったことで、私たちは一体何を得、何を失ったのでしょうか?

検索のための時間や手間が減少する一方で、最近は情報の不確かさが問題になっています。つまり、大量の情報を素早く手にしていても、その内容、意味、正確さを吟味できなければ、結局のところ、私たちは「何も知らない」のと同じなのです。

通訳とは、異なる言語を話す人たちの間に立ち、情報を伝達する手助けをする仕事です。通訳の現場では、情報の意味を正確に伝えることこそ重要であり、通訳者が意図的に意味を変えることは当然許されません。

しかし、だからこそ通訳者を志す者は、常に目の前にある情報の意味を考え、自分が立っている場所を吟味する必要があるのかもしれません。

本書『なぜ戦争は伝わりやすく、平和は伝わりにくいのか』……本来対語であるはずの「戦争」と「平和」が、なぜ情報が伝達される局面において等価でなくなるのか?その疑問を手掛かりに読み進めていくと大変興味深い展開が待っています。

本書を通訳者の立場から、「伝える」をキーワードにして読んでみれば、様々なヒントを見つけることができるでしょう。さらには「自分が手にしている情報とは何なのか」を今一度自分の頭で考え直すきっかけになるのではないかと思います。

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藤岡 みどり(ふじおか みどり)
高校時代のアメリカ留学を経て、東京外国語大学卒業後、商船会社、外資系企業に勤務。アイ・エス・エス・インスティテュート同時通訳科を経て、現在はフリーランスの通訳者として国際会議からアーティストのアテンドなど幅広い分野で活躍中。主に入門科、基礎科レベル、通訳訓練を応用した英語力強化クラスを担当。
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