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通訳キャリア33年の 今とこれから 〜英語の強み〜

2025.09.01

通訳

第21回:通訳の閑散期繁忙期はどうなったのか?

皆さんこんにちは。
昨日まで3世代で泊まりがけでの海水浴旅行をし、神戸への帰省&女子会(中高大)の旅をし、今年の夏休みツアーを終えて帰宅しました。
数十年ぶりの海水浴では、遊泳区域内の沖まで浮き輪なしで平泳ぎで行って、息子夫婦は慌てふためきびっくりされ、瀬戸内海育ち(私)は夏の臨海学校では遠泳が必須なので、誰でも泳げるよとドヤ顔で言ったり、最近の水着のトレンドが肌を隠し、洋服を着て泳いでいるのとほとんど変わらないことに「なるほど」と思ったり。これなら日焼けもしないし、盗撮対策にもなりますね。そして滞在したザ・昭和の名残の家族滞在型リゾートホテルで(懐かしの)ボーリングをしたりして楽しみました。

故郷の神戸では、中高大の友達とそれぞれ3日間ノンストップで女子会を堪能し人生を語りあいました。レストランへの移動の途中、大雨にあって雨宿りのため想定外で入ったパキスタンレストランがとってもおいしかったことなど、楽しく過ごせました。
先月の人生百年にも関連しますが、還暦を過ぎた友と、来し方行く末を話しました。皆の意見は、これまでとは違う30年近い長い老後を過ごすためにはどうすれば楽しい豊かな人生になるのか?がもっぱらの関心事でした。
そして、経済的にはどうなるのだろうか?という話も盛り上がりました。

というとことで、本題に入りましょう。
今月のテーマは「通訳の閑散期繁忙期はどうなったのか?」という題目で進めましょう。
私が通訳デビューをした30数年前は、はっきりと閑散期・繁忙期という区切りがありました。当時既にトップ通訳だった先輩でも、1月は開店休業状態なので旅行したとか、2月末までは暇だから家の改造をしようとか、そういった話が雑談として聞こえていました。夏も8月はほとんど仕事も入らないので(海外企業もバケーション時期で、国際会議やイベントもなかった)、数週間の海外旅行をする通訳者もいました。私は駆け出しだったので、案件自体多くなかったこともあり、その時期はもちろん開店休業状態だったので、当時通っていたISS通訳学校のおさらいや、スキルアップの勉強をまとめてできる貴重な時期でもありました。またZoomもTeamsもなく、会議は外国人が来日または日本側が渡航しての対面での会議形態で、イベントも同様、通訳を帯同して日本人が渡航するか、日本での大会場に海外からの関係者が来日して、全員その場に集まって行う形でした。大量の資料もすべて紙の印刷物で、1000ページほどの資料が出る場合は、スーツケースに入れて運んでいました。そういう時代でした。

その後IT企業の日本への進出が始まり、時代はデジタルエイジへと向かいました。海外の多国籍企業が東京にオフィスを構え、日本人の働き方や休暇カレンダーも、これまでの「お盆休暇、お正月休暇がデフォルト」というパターンだけではなく、海外からきている従業員や欧米の本社の休暇パターンに合わせて、日本人も休暇を設定するようになったと思います。
この頃から通訳案件も、お盆の期間でも依頼が増え始めました。ITには大きな季節的な需要の差はなく、また海外企業の休暇カレンダーにも従うようになったので、年中平坦化されて通訳の需要が増えたように思います。先輩の通訳者の方が「今は、夏は休暇需要のお盆バブルがあるから仕事をして、私は9月に夏休みをとるわ」と言われていた思い出があります。

その後ITやデジタルが日本に定着し、需要や案件の数は年間を通じて「平準化されて忙しい」状態になったと思います。最初は欧米企業だけだったのが、今はインドや南米も加わりました。そうすると様々な宗教や文化やその国の慣習により、様々な節目で休暇をとるようになり、かつての日本のデフォルトの「皆でお盆、お正月のお休み」は少なくなってきました。
勿論、製造業などは工場を休止させる意味もあり、お盆、ゴールデンウイーク、お正月は長めに休暇を設定し、その間は通訳の需要もありませんが、日本にはこういった企業だけがあるわけではなく、また各通訳も一つの業種だけではなく複数の分野をもっているので、その期間もITなどの会議の需要はあります。

私の場合ですと、自動車産業の休暇の時期は従来の日本型+ゴールデンウイークなので、この時期、仕事は減ります。でも、ITや法律などは需要があります。依頼も来ますし、定期会議も続きます。
そこでどうやっているかというと、自分で「閑散期」を作ります。年中繁忙期で働いていると、疲労がたまり、スキルアップの勉強もできません。この時期は休もうと決めて、案件は受けません。心配しなくとも通訳は私だけじゃありませんので、会議は回ります。

今後の世界はどうかというと、グローバル化、ダイバーシティが進む中、キリスト教国、イスラム教国、仏教国など一つが支配するのではなく、休暇もますます多様化するでしょう。結果としてこれといった閑散期はなくなるという傾向は続くと思います。いつもどこかの文化圏は休暇の時期なため、この国の人は会議には参加しないけど、残りのメンバーでは実行するという会議も多く、また今後も増えるでしょう。ビジネスの世界はまだまだ英語が支配言語なので、英語のスピーカーが参加する会議には必ず需要があり、英語通訳の業務は全ての文化・宗教圏をカバーするカレンダーで稼働すると思います。

英語通訳者が本当に安心して休めるのは、ゴールデンウイーク期間中(時々需要はありますが)、クリスマス前から日本のお正月明け(1月3日)までではないでしょうか?
特にクリスマス前の最後の案件を終えると、「あ~今年も終わった!メールも来ないだろうし、やっと休める」と毎年心がウキウキします。勿論、12月24日を過ぎても、仕事は続くし案件を受けている通訳者もいるでしょう。あくまでも一般的にということです。

ますますグローバル化が進むこの世界では、フリーランス通訳者には企業や組織から提供される休暇というものは存在しません。それぞれが、自分の状況や通訳としてのポジショニングを考えて休暇や仕事の緩急も決めなくてはならないでしょう。
そして、休暇を取ると決めた週は、その後にどんな案件が来ようときっぱりとあきらめることも大切です。
ある年、ゴールデンウイーク休暇中に医療的処置をスケジュールしました。その後、その時期に北欧への表敬訪問の出張の依頼が来ました。その国は行きたかった国だったので、とても残念でした。でもいったん決めたら、色々と思わないこと、そしてその期間を楽しむことだと思います。それが人生100年時代に、細く長く仕事を続けられるコツだと思います。

今年はあと秋に温泉、そして年末は長い休みをとってリラックスしたいと思います。そのためにも、来週から始まる「繁忙期」はがんばって乗り切ろうと思います。繁忙期はなくなったと書きましたが、「繁忙期」とは、年中続く繁忙期の中でも特に忙しい時期のことを言っています。
皆さんも、秋は年末へ向かって様々な業種で忙しくなることでしょう。
身体に気を付けてがんばっていきましょう!!

来月は、私の通訳人生の中で心に残った案件というタイトルでお送りします。ほろりとする物語も書きたいと思っています。

相田倫千


大学卒業後、米ニューヨーク州立大学、オレゴン州立大学大学院でジャーナリズム学び、帰国後、ISSインスティテュートに入学。現在はフリーランスの会議通訳・翻訳者として、IT、自動車、航空機、人工知能などのテクノロジー分野と特許など法律のエキスパートとして活躍中。

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