ISSライブラリー ~講師が贈る今月の一冊~
2020.08.04
スキルアップ
第50回:柴原智幸先生(英語通訳)
先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー。
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月は、英語通訳者養成コース講師、柴原智幸先生がご紹介する「文脈力こそが知性である」(齋藤孝著, 角川新書, 2017年)、「本当の翻訳の話をしよう」(村上春樹著, 柴田元幸著, スイッチパブリッシング, 2019年)です。
※先月より4回にわたり、柴原智幸先生のおすすめ本をご紹介。今回が2回目です。
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(※本文は7月掲載の続きです。)
・「文脈力こそが知性である」齋藤孝 著 角川新書
まずは、覚えたことを速いスピードで人に話す練習です。(中略)
本やニュースからキーワードを拾い出し、それについて説明する。(中略)
最初は15秒で一つのネタの話。(中略)
次に30秒で二つのネタをつなげて話す。
さらに時間を1分にして三つ以上のネタをつなげて話す。
(pp.92-93)
文脈をつかむ力は、大きく二つから成り立っています。
一つは、言葉と言葉の因果関係、つながりをつかめているか。
もう一つは、全体的な構造をつかめているか。(中略)
因果関係は「きっちり」つかむ必要があります。(中略)
一方、全体構造というのは、細かいことはともかくとして、その事柄の全体像を捉えることが大切で、「ざっくり」つかむものです。(p.96)
・「本当の翻訳の話をしよう」 村上春樹 柴田元幸 著 SWITCH LIBRARY
翻訳テクストの言語とは関係ない文かに深く根ざした表現は避けよ、ということです。たとえば孟子の文章を訳すとして、「呉竹の世」なんていういかにも日本的な表現を使ったらみんな爆笑するだろう、と別のところで思軒は言っています。(中略)
森田思軒が挙げるいろんな例を見ると、西洋語を訳す際に西洋対日本という対比だけでなく、そこに中国、もしくは漢語が大きな要素としてあったことが窺えます。明治時代に使われ始めた「自由」や「権利」といった言葉の出所は中国の古い文章だったりする。(中略)あっという間に訳語が出来ていったのは、日本人が漢語を使うことができて、日本語にない西洋の単語に対し、古い漢文から拝借したり、適当に感じを組み合わせて簡潔な訳語を作れたことが大きいです。(pp.113-114 柴田)
(9月掲載に続きます。)
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柴原 智幸(しばはら ともゆき)
上智大学外国語学部英語学科卒業。英会話講師、進学塾講師、フリーランス通訳者を経て、英国University of Bath大学大学院通訳翻訳コース修了後、BBCに放送通訳者として入社。2011年より2017年まで、NHKラジオ講座「攻略!英語リスニング」講師。現在は大学講師、NHK放送通訳者・映像翻訳者として活躍中。
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