ISSライブラリー ~講師が贈る今月の一冊~
2020.09.02
スキルアップ
第51回:柴原智幸先生(英語通訳)
先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー。
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月は、英語通訳者養成コース講師、柴原智幸先生がご紹介する「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(加藤陽子著, 新潮文庫, 2016年)です。
※連続4回にわたり、柴原智幸先生のおすすめ本をご紹介。今回が3回目です。
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(※本文は7月掲載、および8月掲載の続きです。)
・They Shall Not Grow Old <彼らは生きていた>(映画パンフレット) ピーター・ジャクソン監督インタビュー
退役軍人たちが振り返って、あの戦争が人生で最高の時だったので、もう一度でもやると言うのを聞いて非常に驚いた。だが、映画を編集しているとき、僕が常に考え続けていたことがひとつあった。それは、僕たちが聞いているのは、生き残った人々の意見だということだ。その人々は老人になるまで生きて、家族もある。仕事もあり、子どもや孫もいるのだ。もし同じ質問を戦争で命を失った人々に尋ねることができるなら、あの戦争が何だったかという意見は、この映画の中で聞かれる人々の意見とはずいぶん異なったものになるだろう。
・「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」 加藤陽子 著 新潮文庫
カーは、「歴史は科学だ」といって、科学ではないとする論に対して反論しています。反論を行なった年は、みなさんのお父さんお母さんの生まれた頃、1961年のことでした。
反論のなかで興味深いのは、「歴史は科学だ」という主張と、「歴史は進歩する」という主張を両方やっているのです。(中略)
カーはこういいます。歴史は科学ではないと主張する代表的な論者は、よく二つの点を指摘する。一つは、歴史は主として特殊なものを扱い、科学は一般的なものを扱う、だから歴史は科学じゃないんだというもの。二つ目は、歴史は何の教訓も与えない。つまり一般化できない学問だから教訓にならないというもの。(中略)
それに対してどのように反論するのか。まず一つ目の論点、歴史が特殊なものを扱い、科学が一般的なものを扱うという分け方は不当だといいます。歴史家が本当に関心を持つのは特殊なものではなく、特殊なものの内部にある一般的なものだ。(中略)
歴史は教訓を与える。もしくは歴史上の登場人物の個性や、ある特殊な事件は、その次に起こる事件になにかしら影響を与えていると。(pp.59-62)
(10月掲載に続きます。)
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柴原 智幸(しばはら ともゆき)
上智大学外国語学部英語学科卒業。英会話講師、進学塾講師、フリーランス通訳者を経て、英国University of Bath大学大学院通訳翻訳コース修了後、BBCに放送通訳者として入社。2011年より2017年まで、NHKラジオ講座「攻略!英語リスニング」講師。現在は大学講師、NHK放送通訳者・映像翻訳者として活躍中。
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