相田倫千のプロの視点『通訳キャリア33年の今とこれから 〜英語の強み〜』
2026.01.05
通訳
第25回:通訳者のキャリアパス ― 戦略分野と自分プロジェクト
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 相田倫千
あけましておめでとうございます。
21世紀も1/4が過ぎました。暦年が21世紀にかわるころ、2000年問題があったのは記憶にありますか?当時のコンピュータは西暦を下2桁で認識する様式を基本としていたため、西暦2000年を1900年と誤認することによりシステムの停止や誤作動が想定された問題で、2000年になると、銀行の情報や預金の管理もおかしくなってしまう、また「世界は終わる」など極端なことを言う人も出て来ました。結局何も起こらず、2000年1月1日 も変わらずコンピュータは立ち上がり、銀行にお金を引き出しに行っても、現金がATMから出てきました。でもその裏には、コンピュータ技術者たちの、不眠不休の対策実行があったことは忘れてはならないと思います。
さて2026年はどのような年になるのか?世界経済が崩壊する、ドル体制が終るなどのニュースや動画も出回っています。SNSの時代なので、その中で事実は何なのかということを常に精査して調べるそして判断するということが必要でしょう。
日本は昨年末近く、憲政史上初の女性首相が誕生し、高い支持率を維持しています。
私の周りでは、日本女性の地位に対する見方や感覚や空気感が変わった気がします。特に私は高市首相と同様、関西の出身なので、奈良出身の首相が、当時四年制大学へ行くのを親御さんに反対されたことなど、奈良の友人もいましたので、その背景も理解できるから余計に感無量です。その頃の女子高校生の四年制大学進学率は、1割に満たなかったと記憶しています。高校(または短大)を出て大企業へ就職し、旦那様を見つけ結婚する、これが花道だった時代です。その時代の女の子が首相になれる時代、そして閣僚も能力主義で選ぶと、女性が数名入っており、党の広報部長も女性。私も高市首相より2歳若いので、「しんどい」とか言っていないで、まだまだ私の通訳力で日本のためになれるのであれば、無理せず頑張っていこうと思いました。
また国の産業政策も変わりました。戦略的投資17分野にするということです。その17分野とは、(1)AI・半導体(2)造船(3)量子(4)合成生物学・バイオ(5)航空・宇宙(6)デジタル・サイバーセキュリティ(7)コンテンツ(アニメやゲーム)(8)フードテック(9)資源・エネルギー安全保障(10)防災・国土強靭化(11)創薬・先端医療(12)核融合(13)重要鉱物(14)港湾ロジスティクス・物流(15)防衛産業(16)情報通信(17)海洋。
大事なことは、通訳の分野を決める時、稼働を安定したものにするためには、やはり経済の潮流に乗ることです。私ごとですが、この中で4分野は自分にとっての主要な専門分野で、特にここ1年ほどで案件数がとても増えています。その分野の通訳は不足しているようで、リタイアした方まで掘り起こしてお願いして大きな会議に来ていただいているという状態です。いずれもテクノロジー分野で、若い通訳者には参入する際抵抗があるのかもしれません。政府が投資をするということを耳にしたときに「この分野の通訳需要も増えるな」と感じるようなセンスを持ってほしいと思います。
通訳個人のスキルや人格や経験は必須です。でもそれだけでは、常に安定して稼働することに対して十分条件ではありません。その上で、自分の立ち位置がどの分野にあるのかが大きな影響を与えます。17分野には入っていませんが、自動車も専門としてやっています。皆さん自動車って、メカやエンジンのことなど、製造業の最たるもので、時代遅れと思っているかもしれませんが、今の自動車産業の通訳がかかわる案件は、ほとんど「AIや情報関連や半導体やエネルギーマネジメントやソフトウエア」です。今や自動車は走る人工知能となりつつあり、自動運転の案件だと、アルゴリズムやコンピュート能力の手法が主な内容です。通訳者によって違いますが、私は工場関係の塗装やメカ的な会議はほとんど担当しません。
また17分野の中には、医療関係やエネルギーもあり、今その分野をやっている通訳者も多いと思います。 ここから先は、全てのテクノロジー分野や融合して、大きくまとまっていくと考えています。
通訳者もそれを念頭に入れて、日々の勉強やスキルアップをするべきでしょう。どんなに素晴らしい同時通訳の能力を持っていても、それをお披露目する機会が少ないのはもったいないですし、日本の産業界のためにもならないと考えます。
通訳者も日本産業界(テクノロジー・金融や医薬、バイオすべて)の一員であるという認識をもって、キャリアパスを構築すると良いと思います。それが、通訳キャリアの中での自分の「市場での売るスキル」となります。
それ以外に「自分プロジェクト」みたいな分野ももっておくと楽しいでしょう。それは、産業界のトレンドとは全く別の純粋に自分の好きな分野で、案件もほとんどないけど、持っておきたい分野です。勿論、その「自分の分野」が産業や国のトレンドと一致していれば、万々歳ですが。
私の場合は、「心理学・スピリチュアル」と「文学」と「人類の歴史」分野です。
私達人間は、なぜそう考え行動するんだろう、心ってなに?意識ってどこにあって何なの?死んだらその後どうなるのだろう?から始まって、どう生きるのか?何のために生まれてきたのだろう?を考える分野です。このような会議、毎週ありませんよね(笑)。
そして、文学です。名作を論議したり、作家の批評をしたりすることです。では、その勉強法は?というと、ポッドキャストやYouTubeには、オースティンやジェーン・エアや欧米の文豪にまつわる検証や小説の要約と解説などたくさんあります。それを聴いています。
スピリチュアルや「生きる意味」の分野は、ショーペンハウアーやニーチェなど代表的な哲学者に関するものを視聴しています。またエドガー・ケーシーという1920年代ごろ生きた「トランス状態で予言したり、あちらの世界を示唆する」と言われている予言者のYouTubeも視聴します。全く違う世界を垣間見ることができ、面白いです。勿論、こちらも毎週定例会議などありません(笑)。
これらの内容を信じるかどうかは別にして、この分野を学ぶことで、人としてどう生きていくのか、人生って何なのか?やさしさとは?知性とは?社交とは何のためにするのか?友情とは?など、テクノロジー分野とは全く違う部分を拡げることで、360度人間としての視界を保てると感じ、私の人生を豊かにしてくれます。
それだけではありません。テクノロジー分野も人工知能で「倫理的人工知能」という話題も出てきており、その際に、ショーペンハウアーやニーチェやその他の哲学者が引用されることもあり、用語をおさえているので、とても役に立ちます。結局は通訳に役立つというところに帰結するのですが。。。。
そして、「人類の歴史」です。今はDNA鑑定なども進化しており、私が学生だった頃(半世紀前ほど)と比べて歴史学は信じられないほど進展しています。北京原人とアウストラロピテクスアフリカ―ヌスが人類の起源と教えられた時代から、人類の進化の過程がある時期途切れジャンプしていて、不明だというところまで来ています。ネアンデルタール人の絶滅についてもいくつか仮定があります。たくさんの名前の人種が登場して、どれが今の私達人類と直接につながっているのか、はっきりわからないらしく、とても面白いです。これは単なる趣味ですが、これも「私達人間は何のために生きているか」と直結します。進化を見て、これからどう進化していけば良いのか、ということです。
さて、ここで筆(キーボード)を置きましょう。
あと二回で私のシリーズも終わりです。様々な視点での今後やキャリアと生き方について思うところを書いてみたいと思いますし、まとめということで、お送りしたいと思います。
では、また来月!!

大学卒業後、米ニューヨーク州立大学、オレゴン州立大学大学院でジャーナリズム学び、帰国後、ISSインスティテュートに入学。現在はフリーランスの会議通訳・翻訳者として、IT、自動車、航空機、人工知能などのテクノロジー分野と特許など法律のエキスパートとして活躍中。
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