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和田泰治のプロの視点『読書三到~或る通訳者の本棚』

2026.04.08

通訳

第8回 『英語でオノマトペ表現』(アルク)『ONOMATOPE』(ナツメ社)

第8回 『英語でオノマトペ表現』(アルク)『ONOMATOPE』(ナツメ社)

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 和田泰治

表層的な言葉の置き換えから脱するための、通訳者の武器とは

以前英語イディオムの書籍を紹介した際に、異なる言語間のコミュニケーションを担う通訳のスキルを身に着ける強力な武器がイディオム(慣用句)であると申し上げた。イディオム(慣用句)の背後にはその特定言語に固有の歴史や文化、慣習が見え隠れする。これを梃として、単に表層的な言葉の置き換えによる通訳から脱する感覚を養うきっかけを掴むことができると考えているからだが、このイディオム(慣用句)と同様の効果のあるものがあと二つある。それが「オノマトペ」と「諺・格言」だ。

豊富で直観的な日本語表現:オノマトペ

今回はオノマトペを学習するために有益な書籍をご紹介したい。

「イディオム」や「諺・格言」と比較するとオノマトペは少し特殊な領域だ。それは、オノマトペに関しては日本語固有の「擬音語」、「擬態語」をどのように英語で表現、あるいは説明するかという点が学習の中心になるからだ。「イディオム」や「諺・格言」に関しては、類似した意味や教訓を伝える表現が日本語、英語それぞれにあり、それは各々の言語を話す国や地域の歴史あるいはそこに伝わる伝承や故事に由来していることが多いため、日本語、英語双方の背景から理解を深め、語感を磨く必要があるのだが、オノマトペに関しては日本語が圧倒的に豊富である。数が多いというだけではなく、日本語のオノマトペはその簡潔な言葉ひとつで生き生きとした情景を直感的に伝えることができる特異な表現だとも言える。日本語のオノマトペは諸外国語と比較してもその充実ぶりは群を抜いており学術研究の対象ともなっている。

英語にも「擬音語」についてはよく知られたものがある。代表的なのは動物の鳴き声を表現する擬音語で、ワンワン(bow wow)、ニャア(meow)、コケコッコー(cock-a-doodle-doo)などはよく知られているしわかりやすい。

一方特に日本語特有の「擬音語」や特に「擬態語」については直接的な定訳語はほとんど無いので、できるだけニュアンスの近い言葉で代用するか、状況、情景、様子、感覚などをいかに英語の文章で説明するかということになる。

ハラハラ、そわそわ、ペコペコ、わくわく、むかむか、ほくほく、メラメラ、がぶがぶ、ちびちび、ちゅうちゅう、すくすく、にょきにょき・・・・・・

『英語でオノマトペ表現』 英語を学習する日本人読者が対象

オノマトペについての書籍も数多く出版されている。構成はほぼ同じで、動作、心象、感覚、態度、性格、天候、食事などの分野に分類したうえで、見出し語となっている日本語のオノマトペに対する英訳の解説が続く。

今回ご紹介する二冊についても構成は同様だが、両著作には基本的な違いがある。『英語でオノマトペ表現』は英語を学習する日本人の読者が対象であり、日本語のオノマトペの感覚に近い英単語や表現が日本語で解説されている。著者のルーク・タニクリフ氏は他にも日本人学習者向けの著作が複数あり、日本人の英語学習者に英語のネイティブスピーカーとしての知見を幅広く情報発信している。この『英語でオノマトペ表現』も非常にわかりやすく実践的な良書だと思う。

『ONOMATOPE』 日本語を学習する外国人向け

一方『ONOMATOPE』のほうは日本語を学習する外国人が日本語のオノマトペの意味、感覚を身に着けられるよう解釈の仕方が英語で記述されており、類似する日本語の別のオノマトペの記載もある。また、『ONOMATOPE』は1語が1ページで解説される構成になっているのだが、各ページの半分ものスペースがイラストになっているのも特徴的だ。日本人からすると日本語のオノマトペは直感的に理解できるのでイラストを見てもさしてその必要性は感じないが、日本語を学ぶ外国人という立場であらためて各ページのイラストを眺めてみると、視覚的な表現で直感的に理解を深めることができるという点で非常に重要だということがわかる。

「カンカン」のイラストを例にとると、まさに鬼の形相で、今まさに掴みかからんとするところを後ろから止められている様子が描かれているし、「ホロリ」では、テレビドラマを見ながらウルウルと(あっ、これもオノマトペだ!)涙を浮かべている女性のイラストが添えられている。

言語の感覚的側面から、コミュニケーションの本質に迫る

二冊ともに「言語の感覚的側面」に光を当てた優れた書籍であり、単なる語学学習の枠を超えて、コミュニケーションの本質に迫る内容となっている。より豊かに、より生き生きとした表現で通訳したいと考える通訳者にとって、大きな示唆を与えてくれる。

今回はここまで。ごきげんよう。

参考文献:

ルーク・タニクリフ(2021)『英語でオノマトペ表現』アルク                   小野正弘 監修 (2019)『ONOMATOPE The Fantastic World of Japanese Symbolic Words』ナツメ社

和田泰治


英日通訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 東京校英語通訳コース講師。明治大学文学部卒業後、旅行会社、 マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。 スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。

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