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ワンランクアップの英語表現

2016.05.01

スキルアップ

第83回 水回り関連のフレーズ

第83回 水回り関連のフレーズ

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

 


以前イギリスに暮らしていたときのこと。水回り関連では本当にハプニングの連続でした。たとえば浴槽のお湯をためようとしていたら、蛇口をひねっても止まらなくなり、浴槽から水があふれんばかりになったことがあります。あるいは、家族が続けてお風呂に入るとタンクのお湯がなくなり途中から水になったこともありましたね。イギリスでは業者さんを予約しても、すっぽかされることが少なくなかったのですが、こと水回り関連ではすぐに駆けつけてくれたのが幸いでした。plumberという職種の英単語を知ったのもそのころでした。


今回は水回り関連のフレーズを取り上げていきます。


1. turn on the waterworks 泣き落としにかかる

Whenever he runs out of his pocket money, he always turns on the waterworks. (小遣いがなくなるたびに、彼は泣き落としにかかります。)

waterworksは「水道設備、給水塔」のことですが、turn on the waterworksで「泣き落としにかかる、泣いて同情を得る」という意味になります。給水設備で蛇口を全開にしている様子を思い描くと、何となくわかりますよね。ちなみに辞書にはwater ~ という語がたくさん出ています。たとえばa watertight plan(周到な計画)、a waterfall of misfortunes(次々と降りかかる災難)、watered-down(計画などが調子を弱めた)などです。なお、water自体はドイツ語のWasserが英語になったものです。

2. take a bath on … ~で大損をする

Because of the stock market crash, I took a bath on all the shares I had. (株式市場の暴落で、持っていた株のすべてで大損しました。)

take a bathは通常「入浴する」という意味ですが、くだけた表現では「大損をする」という意味になります。主にビジネスでの取引や投資などで多大な損をするというニュアンスが含まれています。ちなみにドイツで有名な温泉地Baden-BadenBadenは「お風呂」のことです。なぜBadenを二つ続けているかというと、周辺にはほかにも温泉地がたくさんあるため、そちらと区別するためなのだそうです。なお、イギリスにはthe Order of the Bath(バス勲位)という称号があります。昔はこの勲位を授ける前夜に沐浴の儀式があったとされています。


3. down the drain 水の泡になって

I’m afraid all your hard work will go down the drain. (残念ながらあなたの努力はすべて水の泡になるでしょう。)

down the drainのdrainは「排水管」のことです。ほかにもthrow money down the drain(ムダ金を使う)といった用法もあります。「頭脳流出」をbrain drainと言いますよね。

ところで自分の身近なものを英語で何と言うか迷ったことはありませんか?たとえば「食器用水切り台」などが良い例です。これはdrainboardと言います。


4.hot water 困難

You should be careful in how you speak.  Otherwise, you might get into hot water.(どう話すか気を付けなければいけませんよ。さもないと困難に直面しますから。)

hot waterは「困難」という意味です。be in hot waterまたはget into hot waterという使い方が一般的になります。日本では「水」「お湯」と使い分けていますが、英語の場合、温度に関係なくwaterは用いられますよね。ちなみにcold-waterは「(水道だけで)近代的給湯設備のない」という意味のほかに「禁酒グループの」という語義もあります。

英語の学習をしていると、日常的に知っている単語でも実に多様な意味が潜んでいることに気づかされます。また、hot waterhotdown the draindownという単語を見ると、私はつい反対語で同様のフレーズ、つまりcold waterup the drainなどの表現の存在有無が気になるのですね。このようにして自分から辞書をめくってみたり、インターネットの辞書サイトなどを確認してみたりすると、新たな発見があります。たとえお目当ての表現がなくても、その調べ物の工程自体で様々な寄り道をすることができるのです。

勉強というのは、最短距離「だけ」をめざすのではありません。時には大まわりをしたり、まったく異なる世界に足を踏み入れたりすることすべてが自分の血肉になるのだと私は思っています。


柴原 早苗
 放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。

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