村瀬隆宗のプロの視点『LEARN & PERFORM! 翻訳道(みち)へようこそ』
2026.09.01
翻訳
第57回 Appreciate:何のために勉強するのか
目次
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語翻訳者養成コース講師 村瀬隆宗
ついに悟った?「勉強する意味」
最近のマイブームはガーデニングです。通訳ガイドの仕事で新宿御苑や、浜離宮をはじめとする東京の日本庭園を案内することが多く、ゲストに草木のことを聞かれた場合に備えて「これは何の木だろう?」などと調べているうちに植物への関心が高まりました。そしてついには、雑草だらけの自宅の庭を、自ら育てた草花でいっぱいにすることに憧れるようになりました。
庭といっても、自転車置き場化した3畳ほどのスペースと、玄関へのアプローチに沿った細長ゾーンのみです。この極小庭を、お気に入りの草や花で埋め尽くして雑草を圧倒しようと、足繁く花屋に通い、YouTubeや書籍でガーデニングを学んでいます。その結果…家周りが小ぎれいになりました!草木の管理の仕方が少しは分かるようになりました!しかし、それだけではありません。
犬とのお散歩だけでなく、徒歩や自転車での移動まで、楽しくなりました。今まで何とも思わなかった、よそ様の玄関周りや、ビル周辺の植え込みを、興味を持って観察するようになったのです。最寄り駅までは徒歩で20分ほどかかるのですが、サルスベリだ、ムクゲだ、素敵なグランドカバーだと感心しているうちに、あっという間に着いてしまいます。
似たような経験を最近しました。鳥のさえずりを聞き分けたい(これもガイドがきっかけ)と思いYouTubeで学んだところ、身近にもムクドリ、ヒヨドリなどいろんな種類が棲息していることを知り、見かけると嬉しくなります。それまでは、何とも思っていなかったのに。また、山口旅行で壇ノ浦古戦場跡を訪れましたが、その辺りで平家が滅亡し、安徳天皇が入水したことを知らなければ、何の感慨もわかない、ただのモニュメントだったことでしょう。
ものを学び、気づくことで、人生が豊かになり、一層楽しめる。これが、ガーデニングや鳥のさえずりに興味を持って得た教訓です。「何のために勉強するの?」という幼くも永遠の問いに対する答え。それはさまざまですが、「人生を豊かにして楽しむため」というのが、数十年かけてたどり着いた私の答えです。それを子どもに理解してもらうのは難しそうですが、私はガーデニングをより深く理解し、楽しむために中学高校の生物を復習したいと思っています。
appreciateの意味
この「人生を豊かにして楽しむ」に最も通じる単語、それはappreciateです。単にenjoyするのとは違います。価値を見いだした上で楽しむ。それがappreciateなのです。たとえば、
If you study history, you can appreciate a historical site much more when you visit it.
(歴史を学べば、史跡を訪れた際に一層楽しめる)
のように、ただ単に楽しむ、喜ぶだけではありません。その価値を知っているがゆえに楽しめる、それがappreciateです。
いうなれば、enjoyするのはappreciateのあと。「勉強することによって人生を楽しむ」という流れは、次のように表すことができそうです。
learn(学ぶ) → notice(気づく) → appreciate(価値を知る)→ enjoy(楽しむ)
もちろん、勉強しなくても人生を楽しむことはできます。お金があるほど、人生をより楽しめる!そう考える人は多いでしょう。でもそれって、learnからnoticeまでのプロセスをすっ飛ばして、enjoyを買っているだけでは?learnを通してappreciateすれば、人生はもっと豊かになる。私はそう考えます。そして英語を学べば、入る情報や気づきが何倍にもなりますから、人生を何倍も楽しめるはず!
なお、appreciateは多義語として知られ、「感謝する」の意味も持ちます。ですが、「価値を認める」という点では、楽しむほうのappreciateと同じです。
I appreciate your help.
(手助け感謝します)
と言ったとき、helpの価値を認めた上で、感謝しているわけです。

慶応義塾大学商学部卒業。フリーランス翻訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 英語翻訳コース講師。 経済・金融とスポーツを中心に活躍中。金融・経済では、各業界の証券銘柄レポート、投資情報サイト、金融雑誌やマーケティング資料、 IRなどの翻訳に長年携わっている。スポーツは特にサッカーが得意分野。さらに、映画・ドラマ、ドキュメンタリーなどの映像コンテンツ、 出版へと翻訳分野の垣根を超えてマルチに対応力を発揮。また、通訳ガイドも守備範囲。家族4人と1匹のワンちゃんを支える大黒柱としてのプロ翻訳者生活は既に20年以上。
この記事をシェアしませんか?

