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ワンランクアップの英語表現

2017.03.01

スキルアップ

第93回 「スプレッド」関連の単語を用いたフレーズ

第93回 「スプレッド」関連の単語を用いたフレーズ

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

 

先日テレビのグルメ番組を見ていたところ、パン店が紹介されていました。パンは本来海外から伝わったものですが、日本独自の発展を遂げてきましたよね。カレーパンや焼きそばパン、メロンパンなどは日本ならではの商品です。最近はメーカー側もご当地パンや期間限定パンなどを販売し、多くの人を魅了しています。かく言う私もパンが大好きで、自宅ではホームベーカリーを用いて様々なパンを焼いています。


そこで今月はパンに塗る「スプレッド」系の単語に注目してみましょう。


1. jam tomorrow バラ色の未来

I’m sorry but I can’t settle for a promise of jam tomorrow. (ごめんなさいね。でもバラ色の未来のような約束をすることはできないのよ。)

jam tomorrowルイス・キャロル「鏡の国のアリス」に出てきた表現です。もとは“The rule is, jam tomorrow and jam yesterday – but never jam to-day.”と記されており、「いつも約束だけに終わる明日の楽しみ」という意味で用いられています。

ちなみに学習者向け英和辞典を引くとjamは果肉が入っているタイプで、「果肉なしジャム」はjellyと英語で言います。一方、confiture(コンフィチュール)はもともとフランス語で「ジャム」を意味します。compote(コンポート)はシロップなどで果物を煮たタイプ、confit(コンフィ)は長時間煮て付け込んだものだそうです。いずれも似たような感じですが、元の言語の違いや、調理法の微妙な差などにより、色々な表現があるようです。


2. honeyed お世辞の、(言葉が)甘い

Don’t be fooled by honeyed words.  Otherwise, you might end up buying an expensive product! (甘い言葉に騙されてはだめよ。さもないと高い商品を買わされるかもしれないから!)

honeyedは「(言葉が)甘い、お世辞の」という意味です。他にも「はちみつのように甘い、はちみつ色の」という文字通りの語義もあります。ちなみにイギリスのコッツウォルズ地方はhoney-coloured(はちみつ色)の石を使った家々が有名です。

ところでhoneycomb(ハチの巣)は「(反芻類の)第二胃」という意味もあるのだそうです。画像検索で調べてみると、確かにハチの巣状の形をしていることがわかります。専門用語で「第二胃」はreticulumと言います。retiはラテン語のrete (網状組織)のことです。


3. butter-fingered そそっかしい

I don’t know why I keep dropping things today.  I am so butter-fingered! (今日はどうしてこんなに物をよく落とすのかしら。ホントにそそっかしいわ!)

butter-fingeredは「そそっかしい、よく物を落とす、不器用な」という意味です。ちなみにイギリスのスポーツ、クリケットの世界では「よくポロリと落球する」という語義があります。この言葉が初めてお目見えしたのは今から数百年前のようですが、文字通り「指にバターが付いた状態」を想像すれば、物を落としてしまうのもわかりますよね。

なお、butterは名詞としても動詞としても使えます。I buttered my bread(私はパンにバターを塗った)という具合です。ちなみに「リンゴジャム」は英語でapple butterとも言います。興味深いですよね。


4. Hard cheese! それはお気の毒さま!

You couldn’t do well in the exam?  Hard cheese!  You should have studied harder, though. (試験でうまくいかなかったんですって?それはお気の毒さま!でももっと勉強すべきだったのよね。)

hard cheeseは「それはお気の毒さま」という意味で、どちらかと言うと、皮肉交じりに使う表現です。うわべだけの同情が表れているのがわかります。イギリスでよく使われるフレーズで、アメリカではStiff cheese!と言います。

ところで辞書でcheeseを引くと、green cheeseという単語がありました。こちらは「できたての未熟なチーズ」という意味です。日本語では未熟さを表す際「青」を使いますよね。たとえば「青二才」などがそうです。一方、英語で「未熟さ」は「緑」を用います。greenは他にも「活気のある若さ」や「嫉妬深さ」などを暗示します。色も言語によってニュアンスが異なることがわかります。

季節は間もなく春。おいしい食材が並ぶ時期です。食べ物関連の英語フレーズにもぜひ注目なさってくださいね。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。

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