ワンランクアップの英語表現
2020.02.01
スキルアップ
第128回 「甘いもの」にちなんだ英語表現
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
お正月が終わるや店頭にはバレンタイン・チョコレートが並び始めました。イギリスでは、バレンタインというと「男性が女性にバラの花束を贈る」という位置づけです。在英中、地方を車で運転していると、道端の農場が「バラの花あります」との看板を掲げているのを見かけました。国によって異なるのが興味深いところです。

今月はバレンタインにちなみ、「甘いもの」をキーワードにした英語表現です。
1 sugar the pill 嫌なことをマシに見せる、不安にならないように安心させる
His mother tried to sugar the pill by telling her son that she would only be in hospital a few days. (母親は、ほんの数日入院するだけだからと言って息子を安心させました。
「嫌なことをマシに見せる、不愉快な点を和らげる」は英語でsugar the pillと言います。sugarの代わりにsweetenやgildを使うこともあります。通常、薬というのは苦いものですが、丸薬には糖衣がかぶせられています。そうすることで飲みやすくしているのですね。そこから生まれた英語表現です。
ところで私は食材パッケージの裏面に書かれている原材料の欄をしげしげと眺めるのが好きです。最近は輸入食材も多く、表記も複数言語に渡ります。ヨーロッパからの輸入品には英・独・仏・伊・西を始め、ギリシャ語や北欧言語まで記載されていることもあります。読み比べると、似ている単語もあり、興味深いですね。たとえば「砂糖」はsucre(フランス語)、Zuker(ドイツ語)、zucchero(イタリア語)、Azucar(スペイン語)、socker(スウェーデン語)という具合です。
2 keep .. sweet ~のご機嫌取りをする
He had to exaggerate in order to keep his customer sweet. (彼はお客様のご機嫌取りをするために大げさに言わねばなりませんでした。)
「~のご機嫌取りをする」は英語でkeep … sweetと言います。sweetと聞くと「甘い、親切な」などの語義が思い浮かびますが、実際に辞書で調べてみると実にたくさんの意味があることに気づかされます。上記の例文における用法は、どちらかというとくだけた表現です。
ところで日本ではお菓子やデザートのことを近年「スイーツ」と言っています。インターネットで調べたところ、この用法が広まったのは平成に入ってからでした。単なる甘いお菓子という意味ではなく、「ワクワクする特別なお菓子」というニュアンスを持つそうです。こうした用法は日本独自だとのこと。ちなみにイギリスではデザートをpuddingと呼んでいます。puddingは厳密には「火を通した甘いお菓子。食後に出すもの」です。
3 have a candied tongue 口先がうまい
Beware of a person who has a candied tongue because you might be fooled. (口先がうまい人には注意しなさい。だまされるかもしれないから。)
「口先がうまい」は英語でhave a candied tongueと言います。candyは「キャンディ」のことで、形容詞のcandiedには「砂糖漬けの」という意味の他に、「甘ったるい、へつらいの」という語義もあります。なお、「へつらいの」は他にもflatteringやadulatoryと言います。
なお、日本語の「キャンディー」と言えば、「飴」を連想しますが、アメリカの場合、チョコレートも含まれます。一方、凍らせた「アイスキャンデー」は和製英語で、英語ではPopsicle(アメリカで販売されているもの。商標のためPは大文字)またはice lolly(主にイギリス英語)と言います。
4 the icing on the cake さらに良いこと、添え物
I won the lottery and to put the icing on the cake, my aunt gave me a plane ticket to the States! (宝くじに当たっただけでなく、さらに良いことに叔母がアメリカ行きの航空券をくれました!)
何ともうらやまし状況を表す例文ですが、the icing on the cakeは「添え物、さらに良いこと」という意味です。ケーキの上にアイシングを載せればさらに甘くなり、華やかになりますよね。そうした状況から生まれたフレーズです。the frosting on the cakeとも言います。
cakeを使った表現は他にも沢山あります。たとえばa piece of cakeは「たやすい仕事」、take the cakeは「1位を占める」です。シェイクスピアが作品の中で用いたMy cake is doughtは「計画は失敗した」という意味で、これは「練り粉のまま菓子になりそこねた」という状況から来ています。
以上、今月は「甘いもの」関連の表現をご紹介しました。Happy Valentine’s Day!
柴原 早苗
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。
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