ワンランクアップの英語表現
2022.02.01
スキルアップ
第152回 「thunderを使った英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
車を運転中はAFN (American Forces Network)というAMラジオ放送を付けています。かつてはFEN (Far East Network)と言われていた在留米軍向けの英語ラジオ局です。今のようにネットや学習素材が無かった私が学生の頃は、FENで英語学習に励んだものでした。隔世の感がありますよね。
さて、そのAFNで今なおよく流れているのがImagine Dragonsというアーティストの"Thunder"という曲。2017年の作品です。サビの部分にthunderという語が何度も出てきて、一度聞いたら記憶に残る、そんなメロディです。

そこで今月はthunderを使ったフレーズをご紹介しましょう。
1 steal one's thunder (~を出し抜く)
If you steal your co-worker's thunder on that plan, the consequence could be really serious. (もし君が同僚の計画を自分の手柄にしたら、結果は相当深刻なものになるよ。)
「~を出し抜く、自分の手柄にする」を英語でsteal one's thunderと言います。文字通り訳せば「~の雷を奪う」ですので、なぜこのような意味になったのか不思議な気がしますよね。語源を調べると、これは1900年に初めてお目見えしたフレーズだそうです。イギリスの劇作家ジョン・デニスが雷鳴の舞台効果を発明したものの、それを盗まれたとのこと。非常に悔しい思いをしたというのが由来とされています。
2 in thunder (一体全体)
What in thunder is that? (一体全体あれは何?)
「一体全体」を英語でin thunderと言います。口語表現で、直前の疑問詞を強調する用法です。ちなみにthunder(雷、雷鳴)自体は12世紀以前に誕生した語で、古英語のthunor(雷)から来ています。厳密にはthunderは「雷鳴」だけを表し、「稲妻」はlightningです。日本語の「雷」と言うと、あのゴロゴロ音と光がセットというニュアンスがありますよね。なお、イギリスでは雷がギリシャ神話・ゼウス神の現れととらえられており、雷よけとしてoak(オーク)の木を家の近くに植えるそうです。
3 like a thunderbolt (青天の霹靂)
The news came upon me like a thunderbolt. (その知らせは私にとって青天の霹靂でした。)
「青天の霹靂」という日本語表現を学んだのは確か小学校時代と記憶しています。かなり難しい言い回しですが、不思議な響きに魅了されました。この「青天の霹靂」は英語でlike a thunderboltと言います。thunderboltは「落雷、雷鳴を伴う稲妻」という意味。日本語では「青天の」が付きますが、英語ではシンプルに「落雷のようだ」という表現なのが興味深いです。
ちなみにThunderboltは第二次世界大戦後期に登場したアメリカ陸軍航空隊の戦闘機P-47の愛称です。
4 thunderstruck (驚愕した)
I was so thunderstruck by her story. She had experienced a lot of hardships. (彼女の話に驚愕しました。彼女はあまりにも多くの苦労を経験していたのです。)
「とてつもなく驚いた、驚愕した、仰天した」を英語でthunderstruckという形容詞で表します。名詞の「雷(thunder)」とstruckが組み合わさったもので、strikeは「攻撃する」の過去形。辞書によってはthunderstrickenという見出し語を載せているものもあります。
ところで私は時間があるときに学習者向け英英辞典を引くようにしています。現在愛用しているのは電子辞書搭載の「ロングマン現代英英辞典」。英語ネイティブでない人向けに語義が分かりやすく説明されています。たとえばthunderの定義は"the loud noise that you hear during a storm, usually after a flash of lightning"とあり、中学生レベルの語彙で詳しく書かれているのです。あえて知っている単語をこのようにして調べ、語義を音読するのも良いエクササイズとなっています。
いかがでしたか?今月は「雷」関連の表現をご紹介しました。ところで私が小さい頃はいわゆる「雷じいさん・雷おやじ」たるご近所さんがいましたね。子どもたちがいたずらをすると大声で叱る大人です。今では考えられませんが、こうして周囲の大人たちに見守られ、叱られ、社会ルールを学ぶ環境にあったことを思い出しています。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。
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