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ワンランクアップの英語表現

2022.03.01

スキルアップ

第153回 「rollを使った英語表現」

第153回 「rollを使った英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

 

新年、節分、バレンタインが終わったかと思いきや、店頭にはひな祭り用のケーキやスイーツが並びます。3月3日は桃の節句。「三月節供(さんがつせっく)」とも言い、五節供の一つです。「3月3日があるなら他のゾロ目は?」と調べたところ、「6月6日=ロールケーキの日」であることを知りました。ちなみにロールケーキは和製英語で、正しくは"Swiss roll"または"jelly roll"と言います。


そこで今回はrollを使ったフレーズを見てみましょう。


roll back (縮小する)

The government decided to roll back mask mandate rules.  (政府はマスクの義務化ルールを縮小することにしました。)

roll自体は「巻く、転がる」といった意味ですが、句動詞のroll backは「縮小する」です。実施されていた事柄を少しずつ縮小するというニュアンスがあります。rollを使った句動詞は英語でたくさんあり、こうした句動詞はその都度覚えていくと良いですよね。


2  roll out (発表する、公表する)

Our company will be rolling out a new product at the end of this month.  (弊社は今月末に新商品を発表します。)

新しいものを「発表する、公表する」を英語でroll outと言います。上記のour companyは「当社」「わが社」「うちの会社」など、日本語でも色々な表現がありますよね。通訳現場では、尊敬語や謙譲語なども瞬時に使い分けられるのがベター。よってここではあえて「弊社」と訳しました。

ところでトランプ政権時代、放送通訳現場でよく話題になったのが、「どこまでトランプ氏らしく訳すか?」。トランプ氏が支持者たちを前に一人称の"I"と言った場合、どう考えても「オレ」というニュアンスです。私など日ごろの習慣で「国家元首の発言=ワタクシ」と訳していますので、無意識にそうなってしまったのですね。そのため、「あえて主語を訳さない」という方法も用いるようになりました。


be rolling on (お送りしています)

Our top 10 countdown is now rolling on. We will have a live guest later. (トップ10カウントダウンをただいまお送りしています。後ほどライブゲストをお迎えします。)

ラジオ番組などで使われる「お送りしています」という表現。これを英語でbe rolling onと言います。ちなみに制汗剤でロールオンタイプのものがありますよね。こちらはroll-onと間にハイフンが入り、形容詞です。

なお、rollは13世紀初頭にお目見えした単語で、元はラテン語です。rota(車輪)から来ています。rotationと同じ語源です。


rolling stone (住所不定の人、転がる石)

Although Tora-san was a rolling stone type, he was always thoughtful of others.  (寅さんはいわば住所不定のような人でしたが、いつも他人を思いやっていました。)

rolling stoneは「住所不定の人」という意味で、ことわざ"A rolling stone gathers no moss."(転石苔を生ぜず)という古代ローマの格言から来ています。確かに動かない石には苔も生えますが、コロコロ転がっていれば苔も生えないですよね。寅さんと言えば、いつもどこかを旅しており住所不定タイプですが、他者を思いやり、寄り添う気持ちに秀でた人として描かれています。

ところで「思いやり」からもう一つ話題を。「共感」は英語でempathysympathyがありますが、ニュアンスが異なります。empathyは相手の感情を理解して苦しみを分かち合うのに対し、sympathyは相手を気の毒に思うというニュアンスです。憐れみを感じる様子と言えば良いでしょう。

いかがでしたか?今月はrollを使った表現を見てみました。

最後に私の好きな一文を:

"Empathy fuels connection.  Sympathy drives disconnection."  (Brene Brown)

ブレネー・ブラウンはアメリカの心理学者。「共感がつながりを生み、同情は断絶を生む」という内容です。CNNの人気キャスターAnderson Cooperも「人生で喪失を経験した人は、喪失に直面している人に共感できる」と述べており、empathyを使っています。重みのある言葉ですよね。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。

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