ワンランクアップの英語表現
2022.04.01
スキルアップ
第154回 「数字を使った英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
先日、CNNのニュース通訳を担当していた際、アフガニスタンの映像が流れました。そのとき私が注目したのは車のナンバープレート。ぜひみなさんにも画像検索して頂きたいのですが、よく見ると「2段組み」になっています。下の段は「1,2,3」などの算用数字で、上段はペルシャ語の二カ国語表記です。ペルシャ語の1から3までの数字はシンプルな作りですが、ややこしいのが「5」。数字の「0」にも見えるのですね。

今月は数字つながりということで、数字を用いたフレーズをご紹介します。
1behind the eight ball (ピンチに陥って)
She was behind the eight ball until recently. However, she gained a lot of support from her friends. (彼女は最近までピンチに陥っていました。でも、友人たちからたくさんの支援を得ました。)
「ピンチに陥って」を英語でbehind the eight ballと言います。私が初めてこのフレーズを聞いたのはCNNのニュースで、てっきり野球用語と思いました。でも調べたところ、ビリヤード用語だったのですね。ビリヤードでは台のポケットに「8番ボール」を落としてはいけないルールがあります。もし自分のボールが8番ボールの近くまたは後ろにあればピンチになりますよね。そこから来た表現です。
2 be dressed up to the nines (着飾っている)
They were dressed up to the nines and were ready for the party. (彼らは着飾り、パーティーの準備が整いました。)
「着飾っている」を英語でbe dressed up to the ninesと言います。語源はいくつかあり、「10点満点として考えたから」という由来もあれば、「スーツを作るには9ヤードの布地が必要」などもあるそうです。なお、upを省略してbe dressed to the ninesも使えます。
3 That makes two of us. (私も同感。)
"Doing tax returns is so hard!" "That makes two of us." 「確定申告って本当に大変よねえ!」「私も同感。」)
"That makes two of us"は「私も同感」という意味で、略式表現です。別の表現では"Me too"や"The same is true for me"または"I completely agree"などがあります。
ところで私は紙辞書の「ジーニアス英和辞典」(大修館書店)を愛用しており、時間があるときは紙版で単語を改めて調べるようにしています。紙の場合、視認性が良いので、寄り道がしやすいからなのですね。辞書でtwoを調べたところ、見出しの横の説明に類語としてsecond, binary, double, dualなどが出ていました。binaryは放送通訳でも結構出てくる単語です。このようにして「ついでに」調べることを蓄積できれば、単語力アップにつながります。
4 three-ring circus (てんやわんやの状況)
Whenever my friends and I get together, it is always three-ring circus. (友人たちと集まると、いつもてんやわんやの状況になるのですよね。)
three-ring circusはサーカスの舞台で3つの演目が同時進行する様子を表します。私も数年前にライブのサーカスを観に行ったのですが、目の前で複数のショーが繰り広げられ、どこに焦点をあてるべきか迷ってしまうほどの大スペクタクルでした。
「てんやわんやの状況」のthree-ring circusはそこから生まれた表現です。「目まぐるしいもの、おもしろいもの」というニュアンスを含みます。
ところでサーカスと言えば、ロンドン中心部にPiccadilly Circusがあります。このcircusは、放射線状の道路が集まる円形広場を意味します。一方、アメリカ英語ではこうした広場はcircleです。ちなみにサーカスの「シルク・ドゥ・ソレイユ」は日本でも大人気ですが、私はカタカナだけ見た際、「どういう絹(シルク)かしら?」と大真面目に思ったものでした。早速調べたところ、フランス語のcirqueでした。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」と言いますが、「調べるは一時の恥」だと痛感しました!
いかがでしたか?今月は数字が出てくるフレーズを見てみました。
最後に数字の話題をもう一つ。ロンドンに暮らしていたころ、フランスに住む友人宅(固定電話)に電話をしたことがあります。そのとき受話器から聞こえてきたのは自動メッセージ。どうやら電話番号が変わったということを述べていたようなのですが、何しろ全てフランス語で数字の羅列!しかもフランス語では電話番号を二桁ずつ区切って言うのですよね。そのルールを知らず、慌ててしまったのでした!
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。
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