ワンランクアップの英語表現
2023.06.01
スキルアップ
第168回 「-goを使った英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
日々の生活を続けていると、照る日曇る日があります。心躍る時もあれば、先が見えず苦しくなることもあるでしょう。英語のイディオムにgo with the flow(流れにまかせる)がありますが、しんどい時はじたばたせず、自然な展開を享受するのが良いかもしれません。
今月はgoを用いた表現をご紹介します。いずれも”-go”という形の英語です。

1 from the get-go 最初から
She knew from the get-go that he was special. (彼女は最初から彼が特別だとわかっていました。)
「最初から」を口語表現でfrom the get-goと言います。get-go(最初)という用法はアメリカで1960年代から使われています。git-goという表記もあるのですね。from the get-goはfrom the beginningと言い換えることも可能。表現力アップのコツは、同義の言い回しを複数ストックしておくこと。通訳の際、日本語でも英語でも数パターンの訳語を持っていると、洗練されて聞こえます。
ところで英語にはgetを用いたフレーズが多く存在します。アメリカ大使館同時通訳者を務めた故・松本道弘先生は、生前、getやgiveに着目しておられました。1983年発行の「Give get辞典」はベストセラーとなっています。
2 go-no-go 決行か中止か
We need to make a go-no-go decision about our project. (私たちはプロジェクトについて決行か中止かの決断をせねばなりません。)
「決行か中止か」を英語でgo-no-goと言います。文字通り訳せば「行くか行かないか」ですよね。make a go-no-go decisionは「決行か中止かの決断」となります。表記ではgo/no-goのようにスラッシュを入れたり、go or no-goのようにorを入れたりするものもあります。
ところで日本語の「四の五の言わずに」の語源は賭博から来ています。「丁(偶数)」か「半(奇数)」を決めかねて迷う様子を表しているのですね。
3 get-up-and-go やる気、意気込み
She suffered a lot in the past but now, she has a lot of get-up-and-go. (彼女は過去に苦しんだものの、今ややる気にあふれています。)
「意気込み、やる気、エネルギー」を英語でget-up-and-goと言います。まさに「立ち上がって進み始める」というニュアンスがありますよね。ハイフンが無ければ、”get up and go to the kitchen(立ち上がって台所に行く)“のように使えます。
ところでgetつながりで一つ。グロリア・エステファンの”Get On Your Feet”は1989年にリリースされ、日本でもヒットしました。聞くだけで元気が出てくるメロディです。グロリアは数年前、コロナ流行を受けてこの曲を替え歌にして、”Put On Your Mask”と呼び掛けていました。
4 no-go 立ち入り禁止の
The government has created a no-go zone around the plant. (政府はその工場の周囲を立ち入り禁止区域にしました。)
no-goは「立ち入り禁止の」という意味です。no-goはほかにも口語表現として「中止になった、準備できていない」などの語義があります。noもgoも平易な単語ですが、様々な意味がある場合、文脈から想像することが大事になります。
ところで日本の道路標識の「車両進入禁止」は赤丸の中に白の横線です。イギリスの標識を調べたところ、「馬車の進入禁止」なるものを発見。なかなかかわいいデザインです。気になる方は調べてみて下さいね。
いかがでしたか?今月は-goを使った表現をご紹介しました。ところでgoをオックスフォード新英英辞典で調べたところ、日本の「碁」の説明が。” a Japanese board game of territorial possession and capture” とありました。自分が知っている単語や日本関連の用語をあえて英英辞典で引いてみると、新たな発見があります。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当。大学や企業での学習アドバイス経験多数。各種サイトでコラムも執筆中。
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