ワンランクアップの英語表現
2024.12.03
スキルアップ
186回「『災害関連の単語』を使った英語フレーズ」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
先日、防災関連の国際会議通訳を担当しました。私自身、防災には関心があり、ここ10年ほどはローリングストックを備えています。日ごろ自分が食べている食材を「回しながら」消費して、再度ストックすることから、この表現が生まれているのですよね。ただし、「ローリングストック」は和製英語。英語ではrunning stockやfixed stockと言います。一方、英語のrolling stockは「鉄道車両」のこと。和製英語は注意が必要です。

今回は「災害関連の単語」を用いた英語フレーズを見ていきましょう。
1 a red alert moment 非常事態
Due to financial shortage, the hospital was facing a red alert moment. (資金不足が理由で、その病院は非常事態に直面していました。)
「非常事態」を英語でa red alert momentと言います。文字通り訳せば「赤い警報の瞬間」です。警報や警告は赤色で示されることから、この表現が生まれました。ちなみに日本では道路の信号を「赤・青・黄色」と呼びますが、英語圏では”red, green, yellow”です。ただしイギリス英語ではyellowではなくamber(琥珀色)を使います。
一方、計画などに「ゴーサインを出す」は英語でgive a green lightと言います。「ゴーサイン」は和製英語であり、goを使うのであれば、give the go-aheadが良いでしょう。
2 a seismic shift 劇的な転換
My manager announced a new plan. It was a seismic shift from the current initiatives. (私の上司が新しい計画を発表しました。現在の取り組みから劇的な転換でしたね。)
「劇的な転換・劇的な変化」を英語でa seismic shiftと言います。英語のseismicは「地震の」という意味。つまり、「地殻変動的な変化」というニュアンスをこのフレーズは有しているのです。なお、seismicの語源はギリシャ語のseimosで、seiの部分は「揺れる」という意味になります。
3 quake with laughter 笑い転げる
The rakugo performed by Master Katsura Yonedanji was extremely funny! We were all quaking with laughter. (桂米團治師匠の落語は最高に面白かった! 私たちは皆、笑い転げていましたね。)
「笑い転げる」を英語でquake with laughterと言います。冒頭のquakeはearthquake(地震)という名詞の意味もありますが、こちらは動詞で「揺れる、震える」ということです。確かに爆笑していると体が大いに揺れますので、まさに言い得て妙ですよね。
ちなみに上記の例文は実話です。私は上方落語・桂米團治師匠の大ファン!先日も師匠がプロデュースした「おぺらくご」を観に日帰りで奈良まで出かけてきました。「おぺらくご」とは、オペラと落語を一体化させたもの。今回の演目はモーツァルトの「フィガロの結婚」です。3時間強ある作品を、50分ほどに師匠が凝縮し、落語風に日本語でアレンジ。奈良フィルハーモニー管弦楽団、ソリストの歌姫たち、そしてオペラにも造詣の深い米團治師匠の歌とお噺が楽しめる公演でした。
4 as quick as a flash of lightning 稲妻のように速い
As soon as we ordered our food, the staff brought them as quick as a flash of lightning. (私たちが食事を注文するや、スタッフは稲妻のように速く持ってきてくれました。)
「稲妻のように速い」を英語でas quick as a flash of lightningと言います。「稲妻」はlightningで、「ひらめき・閃光」がflashです。確かに稲妻というのは瞬く間に発生しますよね。状況から想像できる英語表現です。
ところで音と稲光の関係、どちらが先か後か一瞬迷いますよね。雷の音は1秒間でおよそ340メートル進むそうです。これは、空気が振動することで伝わるからです。よって、光ってから3秒後に聞こえたら1キロメートル、10秒後なら3.4キロメートルぐらいの場所に落ちていると計算できます。
いかがでしたか?今月は「災害関連の単語」を用いた英語フレーズを見てみました。ちなみに例文4に関連してもう一つ。最近、予告なしで花火が打ち上げられることがよくあります。我が家の近くでも週末に突然「ドーン」という大きな音を聞くことが少なくないのです。調べたところ、「シークレット花火」「ゲリラ花火」と言うのだとか。ネットに情報はないのですが、その瞬間にSNSを見ると多くの人がつぶやいていることがわかります。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラム執筆にも従事。
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