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ワンランクアップの英語表現

2022.07.01

スキルアップ

第157回 「-outを用いた英語表現」

第157回 「-outを用いた英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

イギリスの夏の風物詩と言えば何といってもテニス!6月下旬からテニスの全英オープンが開催されます。私自身、小学校時代に暮らしたロンドンの学校でも夏になるとテニスが授業で実施され、とても楽しかったことを覚えています。もっとも私の場合、しょっちゅうボールがoutになっていたのですが。


さて、今月はそのoutを用いた英語表現を見ていくことにしましょう。


1 handout 資料、プリント

I am going to pass on the handouts so that you can see the detail.  (詳細をお分かりいただけるよう、資料をお配りいたします。)

日本語でもすでに「ハンドアウト」というカタカナでおなじみになってきた「資料、プリント」。英語ではhandoutです。一方、人に物を「渡す、回す」はpass onという句動詞を使います。pass onは他にも「病気をうつす」などと言った語義もあります。

ところでこの原稿を毎月執筆する際、私は複数の辞書を引いているのですが、同じ単語でも辞書によって語義の順番が異なるのが興味深いですね。handoutも「ランダムハウス大英和辞典」と「リーダーズ英和辞典」ではトップに「施し物」が来ています。一方、ネット上の辞書では「資料」が先に書かれています。時代と共に言葉の意味の優先順位も異なってきていることがわかりますよね。


readout (政治家などの)公式声明

Yesterday, the government issued a readout, summarizing the President’s meeting.  (昨日、政府は大統領の会合をまとめた公式声明を出しました。)

政治家などによる「公式声明」を英語でreadoutと言い、主にこれはアメリカでよく使われています。辞書でreadoutを引くと、コンピュータ用語の「読み出し」が第一語義に来ているのがほとんどです。

ところで放送通訳現場で注意を要するのがPresidentということば。アメリカであれば「大統領」ですが、中国なら「国家主席」、キューバなら「議長」、大学なら「総長、学長」、会社なら「社長」と訳します。同時通訳でどうしても度忘れしてしまった場合は、苦肉の策として「○○のトップ(幹部)」などで切り抜けざるを得ません。日頃から知識としてインプットしている必要性を痛感します。


walkout ストライキ

The staff staged a five-day walkout over pay. (職員は賃金をめぐり、5日間のストライキを実施しました。)

walkoutは「ストライキ」のことです。なお、ストを「実施する」はこの例文にも出てくるstage。演劇を「上演する」という意味だけでなく、反対運動などを「展開する、行う」という語義があります。

ところでwalkoutがあるなら、walkinは?探したところありました。「予約なしにふらりとやってくる飛び入り客」という意味だそうです。


bailout 緊急援助

The government had decided to give a bailout to the airline company. (政府はその航空会社に対して緊急援助をすることを決定しました。)

「緊急援助、支援」を英語でbailoutと言います。昔は「(航空機からの)緊急脱出」という意味の方がメインでしたが、最近は経済関連のニュースでよく出てくる単語です。初出は1950年代ですので、比較的新しい単語と言えるでしょう。語源はbail(船から水を汲みだす)から来ています。

ところでbailには複数の意味があります。法律用語では「保釈、保釈金」のことです。ちなみに日本語に「保釈」と「釈放」がありますが、この二つ、似ているようで意味が異なります。気になる方はぜひこれを機に調べてみてくださいね。放送通訳現場でよく私が混同するのが「保釈、釈放、解放」です。なお、検索サイトで調べる際には「保釈 解放 釈放 違い」と一文字ずつ空欄を入れた後に「違い」と入力すると、具体的なページがヒットします。さらに図解説明をご希望であれば「画像」検索で絞り込んでみてください。


今月は-outを使った単語をご紹介しました。最後にもう一つ。幼少期にオランダで暮らしていた際、高速道路の出口に”UIT”の文字をよく見かけました。「ウイトって何?」と幼心に思っていたのですが、OUTのことだったのですね。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。コラム執筆のほか「放送通訳者・柴原早苗」(https://note.com/sanaeinterpreter/) 更新中。


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