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ワンランクアップの英語表現

2024.04.02

スキルアップ

第178回 「連想ゲーム式に今月はご紹介!」

第178回 「連想ゲーム式に今月はご紹介!」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

CNNの放送通訳をしていると、興味深いフレーズによく遭遇します。控室で画面をモニターしながら準備中の場合は、表現や単語を手元のノートに書いて意味を調べます。でも、本番の真っ最中ではそれができません。「わっ!聞いたことのない表現。比ゆ的で面白そう!」と思っても、同時通訳ですのでどんどん新しい情報が耳に入ってきます。ゆえになかなか書き写せないのですね。そのような時は、録画済みの動画を控室に戻ってから再生して復習するようにしています。


今回ご紹介する表現も、そのような状況下で集めたもの。本コラムではいつもジャンル別にフレーズを4つご説明していますが、今月は一つの表現をまずは取り上げ、そこに出てくる単語から派生していきます。いわば「連想ゲーム」的な感じです。


not touch … with a ten-foot pole ~に絶対に口出ししない

She would not touch that topic with a ten-foot pole. (彼女はその話題に絶対に口出ししません。)

「~に絶対に口出ししない」を英語でnot touch … with a ten-foot poleと言います。文字通り訳せば「~に10フィート棒を使っても触れない」です。具体的には、「どれほど長い棒を使ったとしても、それには触りたくない」という状況を表します。

このフレーズの語源は、18世紀中ごろにさかのぼります。船舶用語であり、舟を漕ぐときに使う棒が元にあります。他のボートや障害物を避ける上で棒は必要ですよね。ただ、語源には諸説あるようで、「アメリカのニューオーリンズにおけるスペイン入植者が、遺体埋葬関連で10フィート棒を使った」との説明もありました。


have a golden touch on … ~の素晴らしい才能がある

He has a golden touch on making fine objects. (彼は細かいものを作る素晴らしい才能があります。)

1文目の例文に出てきたtouchを使った表現を。英語で「~の素晴らしい才能がある」をhave a golden touch on …と言います。「金のタッチ」というと何だか神々しいですよね。元はギリシャ神話のMidas(ミダス)王から来ています。ミダス王には不思議な能力があり、手に触れることで目の前のものを黄金に変えることができたそうです。have the Midas touchは「金儲けの才がある」という意味になります。


jump in with both feet 熱心に取り組み始める

In a new environment, she decided to jump in with both feet. (新たな環境で、彼女は熱心に取り組み始めようと決意しました。)

3つ目のフレーズはfoot feetを使ったものを。jump in with both feetは「熱心に取り組み始める」です。「両足を使って跳ぶ」と文字通り訳すと、何となく状況が想像できますよね。

ところで「飛ぶ」の英語にはjumpleapがあります。jumpは「飛び降りる、飛び込む」というイメージですが、leapは「跳んで移動する」という雰囲気。アポロ月面着陸でアームストロング船長が、”one giant leap for mankind”(人類にとって大きな飛躍)と述べた有名なフレーズがあります。


be poles apart かけ離れている

Their characters are poles apart. (彼らの性格はかけ離れています。)

最後の単語はpoleを使っています。「かけ離れている」は英語でbe poles apartと言います。こちらは同じpoleでも「南極・北極」の「極」を指すもの。語源は20世紀初頭で、南極・北極の距離的な差を表したものです。ちなみに両極の距離はおよそ2万キロメートル。確かに長いですよね。

ちなみに私は中古車のサイトを見るのが好きなのですが、走行距離2万キロ以上のものもたくさん。両極の長さを走ったと考えると、壮大なイメージです。


いかがでしたか?今月は1文目の例文を出発点として、そこに使われている単語を連想ゲーム式でご紹介しました。なお、「連想ゲーム」は英語でassociation game、「伝言ゲーム」はtelephone game(イギリスではChinese whispers)、〇×(まるばつ)ゲームはtic-tac-toe(イギリスではnoughts and crosses)です。幼少期に暮らしたオランダやイギリスではこうした遊びが盛んでした。今やオンラインゲームが主流ですが、電子機器を使わない遊びも楽しいなあと改めて感じます。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当。大学や企業での学習アドバイス経験多数。各種サイトでコラムも執筆中。


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