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ワンランクアップの英語表現

2025.06.03

スキルアップ

第192回「物語に出てくる人名を用いた英語表現」

第192回「物語に出てくる人名を用いた英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

数週間前にCNNのニュースでトランプ関税の話題が出てきました。そのときの番組コメンテーターはRichard Quest記者。私が90年代後半にロンドンのBBCで勤めていたころ、氏はBBCの経済番組を担当していたのです。その後はCNNへ移籍。現在は経済や航空事情の専門家としても知られています。歯に衣着せぬ物言いと、イギリス人ならではのユーモアあふれる解説、そして浪花節風な話し方が私は好きで、応援しています。


そのクエスト記者の発言で出てきたのが、今回最初にご紹介するPollyannaという人名。初耳でした。そこで今回はPollyannaをはじめ、物語に出てくる人名を使った英語表現をご紹介します。


Pollyanna 極度の楽観主義者

I don't want to sound like Pollyanna, but I would like to go ahead with this plan. (極度の楽観主義者に思われたくないけれど、この計画で進めたいと思います。)

「極度の楽観主義者」を英語でPollyannaと言います。「ポリアンナ」はEleanor Porterの小説に出てくる主人公の名前。1913年に出版された同名の小説には、いつも喜ぶべきことを見つける楽観的な少女ポリアンナが出てきます。そこから生まれたのがこのフレーズです。

なお、この作品は日本でも「少女ポリアンナ」というタイトルでポプラ社から発行されています。一方、映画化は1960年。主役を務めたのはイギリスの俳優ヘイリー・ミルズさんでした。あの「ジェシカおばさんの事件簿」に出演している俳優さんです。


Walter Mitty 自分を有能だと勘違いしている人

He says he wants to be a billionaire but he is not working hard enough. He's a real Walter Mitty! (彼は億万長者になりたいと言っているが、努力が足りないよ。まさに自分を有能だと勘違いしているよね!)

Walter Mitty(ウォルター・ミティ)とは、「ごく平凡な人間が自分の有能性を勘違いしている状況」を表します。もとはジェームズ・サーバーの短編小説「ウォルター・ミティの秘密の生活」から来ており、この作品は映画「虹を掴む男」(1947年)の原作にもなっています。なお、このフレーズを文章で用いる際には最初に不定冠詞aを付けて、a Walter Mittyとするのが一般的です。Walter Mittishと形容詞で使うこともできます。

ところで私は人名が出てくると、英語読みだけでなくフランス語やドイツ語版を調べたくなります。たとえば英語のJohnJean (フランス語)、Johann (ドイツ語)、Ivan (ロシア語)という具合。Walterを調べたところ、Walther (ドイツ語)、Valter (スペイン、ポルトガル、イタリア語)、Gauthier (フランス語)があることを知りました!興味深いですよね。


minion 手先

We'd better be careful with that person because he is one of the boss's minions. (あの人はボスの手先の一人だから気をつけた方がいいよ。)

minionと聞いて真っ先に思い出すのが、あの青いオーバーオールとゴーグルのキャラクター。アニメ映画「怪盗グルー」に出てきますよね。愛らしい小さなキャラクターでおなじみですが、ミニオンズは「小さい」から「ミニ」オンズというわけではありません。英語のminion自体に「手下、子分」という意味があるのです。

minionの語源はフランス語のmignonで「かわいらしい、愛くるしい」という意味。女性の名前としても使われますし、極上牛肉の小さな切り身はfilet mignon(ヒレミニョン)と言います。「愛くるしい」から「手先」に意味が飛躍していったのも面白いです。


a stitch (脇腹の)急な痛み

I decided not to enter the marathon race this time because I got a stitch. (今回はマラソンレースに出ないことにしたよ。お腹に急な痛みを覚えたのでね。)

「脇腹の急な痛み」を英語でa stitchと言います。ディズニー映画「リロ&スティッチ(Lilo & Stitch)」のstitchと同じスペル。stitchは英語で「ひと縫い、縫い糸」という意味で、キャラクターのスティッチの名前の由来は一説によれば「人の心を縫い合わせる」から来ているのだそうです。


いかがでしたか?今月は作品に出てくる名前を用いた英語フレーズを見てみました。ところで私は大学生のころ、いわゆる「世界の名文学」「日本の名文学」を制覇しようと考えたことがあります。あいにく初動段階で挫折しましたが(笑)、それでも高校の国語便覧に出ている作品の名前だけは意識するようになりました。人生は有限だからこそ、良き文章に触れていきたいと思っています。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラム執筆にも従事。

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