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ワンランクアップの英語表現

2025.09.02

スキルアップ

第195回「bucketを使った英語表現」

第195回「bucketを使った英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

少し前に「アイスバケツチャレンジ」というチャリティ活動が話題になりました。これはALS(筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう))に関する啓蒙活動と寄付金調達を目的としたもの。著名人が氷水の入ったバケツを頭からかぶる様子がSNSで公開され、バトンリレーのごとく次の挑戦者の名前を挙げるというものでした。ちなみにALSAmyotrophic Lateral Sclerosisのこと。amyotrophicの語源はギリシャ語で、「a- (=not) + muo (=muscle) + trophe (=nourishment)」、lateralは「側面の」、sclerosisの語源もギリシャ語で、「skeleros(堅い)」です。単語も分解してみるとわかりやすくなりますよね。


さて、今月は「バケツ (bucket)」を用いた英語表現のご紹介です。


broad buckets of information 広範囲な情報

Before we get on with the marketing campaign, we need to gather broad buckets of information. (マーケティングキャンペーンを始める前に、広範囲な情報を集めないといけませんよね。)


「広範囲な情報」を英語でbroad buckets of informationと言います。bucket自体は「バケツ」のことですが、「バケツ一杯の量の」という意味から転じて「大量の、たくさんの」という語義も有するようになりました。なお、bucketは日本語発音だと「バケツ」ですが、英語では「バケット」です。

ちなみに私がBBCで勤務していた1990年代にヒットしていたのが”Keeping Up Appearances”というコメディ。見栄っ張りな中年女性Hyacinth Bucketが主人公です。彼女の名字の発音は「バケット」であるにも関わらず、周囲に自分のことをMrs. Bouquet(ミセス・ブーケ)と呼ばせるなど、細部にわたって外面重視なのも笑えました。動画サイトにもありますので、興味のある方はぜひ。


bucket list やることリスト

Paragliding?  Sounds interesting!  Let me put that into my bucket list(パラグライダー?楽しそう!やることリストに加えておこう。)

bucket listは「やることリスト」という意味です。to do listと置き換えることもできます。bucket listの元となったのは2007年公開のアメリカ映画”The Bucket List (最高の人生の見つけ方)”。余命宣告を受けた二人の男性が、亡くなる前にやりたいことを実行すべく冒険をするという内容です。この語源となったのはkick the bucket(死ぬ)というイディオムです。


3 weep buckets 号泣する

When my beloved dog died, I wept buckets for ten days, but I am now OK so don’t worry. (愛犬が亡くなった際、10日間も号泣したけど今は大丈夫。心配しないで。)

weep bucketsは「号泣する」という意味です。これは「バケツがいっぱいになるほど泣く」様子から。悲しい時だけではなく、喜んだり感動したりした際にも使える表現です。

ところで日本のワイドショーや週刊誌などの見出しに芸能人が「号泣」などと書かれることがあります。でも実際に見てみると涙が少し流れただけ、というケースも。あえて大げさに表記することで受け手を惹きつける狙いがあります。これに関する読売テレビの道浦俊彦氏による興味深い考察もどうぞ:
https://www.ytv.co.jp/michiura/time/2017/03/post-3555.html


a bucket brigade 一致団結して協力

In order to finish off this plan, we need a bucket brigade. (この計画を終わらせるには、一致団結して協力しなければ。)

「一致団結して協力」を英語でa bucket brigadeと言います。これは「消火活動のためのバケツリレーの列」なのですが、そこから転じて「一致団結して協力」という意味も持つようになりました。緊急事態の際、人々が協力し合う様子を表します。

ところで放送通訳の現場では軍事用語も沢山出てきます。兵士の階級はもちろんのこと、軍隊の単位も頻出します。brigadeは「旅団」という意味ですが、他にもbattalions, squadrons, regimentsなども。なかなか和訳とセットで覚えるのが難しく、私は難儀しています。同時通訳の際に迷ってしまったら、「一次元上から鳥瞰図的にとらえてざっくりと訳す」のが鉄則。よって「部隊」とすればOKです。


いかがでしたか?今月はbucketを使った表現をご紹介しました。最近は折りたたみ式のバケツも人気で、英語ではcollapsible bucketと言います。非常時用に一つあると便利ですよね。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラム執筆にも従事。

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