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ISSライブラリー ~講師が贈る今月の一冊~

2017.05.02

スキルアップ

第13回:藏持未紗先生(英語通訳)

第13回:藏持未紗先生(英語通訳)

先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、藏持未紗先生ご紹介の「NHKラジオ 入門ビジネス英語: 関谷英里子のビジネスに効く英単語101」(関谷英里子著、NHK出版、2011年)です。
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「problem」と「issue」の違いは何でしょうか?どちらも「問題」という意味で使われることの多い単語です。では、日本語で「問題」という言葉が出てきたときに、「problem」と「issue」のどちらの単語を使って訳出するのが適切なのか、どのように判断しますか?

通訳は言葉を訳すというよりも、オリジナルの言語で聞いた内容を頭の中に絵を描くようにイメージして、そのイメージをターゲット言語で表現し直す作業です。言葉を訳すことにとらわれ過ぎて、辞書に書いてある意味をそのまま1:1の訳語で覚えて、訳出の際にそのまま単語を自動変換して使おうとすると、不自然な日本語・英語の表現になってしまうことがあります。私も学校に通っていた頃は、通訳というよりも言葉を変換することに意識が行き過ぎて、不自然だと分かっていても、その訳語しか知らないため、他にどう表現して良いか分からず、かといって、その単語(情報)を無視するわけにもいかず、無理やり訳出に入れ込んでは、先生に「日本語がおかしい」「それは結局どういうこと?」と注意されたことは数知れずです。

また、1つの単語には多くの意味がありますから、辞書に書かれている意味をすべて覚えようとするのは大変ですし、辞書に書かれていない使われ方をすることもあります。したがって、単語の1:1の対訳を覚えるよりも、単語のイメージを理解する方が通訳者にとっては有益なことが多々あります。単語のイメージが分かっていれば、その単語と同じイメージを持つターゲット言語の単語を文脈に合わせて適切に選ぶことができ、より自然な表現で通訳することができるようになるのです。

NHKラジオ「入門ビジネス英語」のテキストを基にしたこの本は、そんな単語のイメージを説明してくれています。例文も多く記載されており、どういう状況で使われる言葉なのか、細かいニュアンスまで理解することができます。また、各単語の意味が英英辞典でどのように説明されているかも解説されており、より言葉のイメージを把握しやすくなっています。どれも決して難しい単語ではありませんが、英語のネイティブスピーカーが良く使う単語ばかりで、この101語をしっかりと自分のものにするだけでも、ネイティブっぽい表現ができるようになるはずです。また、ビジネス単語に絞ってあるので、通訳者を目指している人だけではなく、仕事で英語を使う人にとっても、明日からすぐに使える実践的な内容になっています。

単語に苦手意識のある方、冒頭の単語のニュアンスの違いの答えを知りたい方、表現をブラッシュアップしたい方など、ぜひこの本を手に取ってみてください。

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藏持 未紗(くらもち みさ)
高校時代に1年間アメリカに留学。国際基督教大学教養学部を卒業。2008年にISSインスティテュートに入学。在学中よりメーカー、製薬会社等で社内通訳者として経験を積む。同時通訳科を経て、現在はフリーランス通訳者として稼働中。
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