ワンランクアップの英語表現
2013.06.03
スキルアップ
第48回:「流れ」に関連した表現
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
今回は「流れ」に関連した英語表現を身につけましょう。一言で「流れ」と言っても下記のように色々な単語があるのが分かります。

1. During the meeting, everyone got excited and there was a torrent of talk. (会議中、皆が興奮してしまい、話がひたすら続いていた。)
torrent は「激流」という意味です。a torrent of ~ は「~のほとばしり、~の連続、~の連発」となりますので、上記の英文は、おしゃべりが絶え間なく続いている状況を表しています。
torrent はもともとラテン語が語源で、torreo(焦がす)という意味があります。それが転じて水の激流や感情のほとばしりといった意味に転じたのです。他にも torrent of lava(溶岩流)、torrent of passion(ほとばしる情熱)といった表現があります。
2.If you want to observe the situation for a while, it might be better to swim with the current. (もし状況をしばらくの間注視したいのであれば、流れに順応する方が良いかもしれません。)
swim with the current は「流れに順応する」という意味です。current は「流れ、潮流、海流、気流、電流」などのことです。流れに逆らわず、流れと共に泳げば無難ですよね。そのような状況から生まれたフレーズです。
この表現は、drift with the current や go with the current と言い換えることもできます。また、currentの代わりに tide や stream も使えます。
ところでイギリスでかつて暮らしていた頃、銀行口座を開設したところ、current accountの口座となりました。日本では普通預金が一般的ですが、イギリスでは current account(当座預金)の方が主流なのですね。扱いは日本の普通預金と同じでした。
3.He is always prepared. He is trying his best to save the tide.(彼はいつも準備万端です。好機を逃さないために最大限の努力を払っています。)
save the tide はもともと「(船が)潮のあるうちに港に出入りする」ということです。それが転じて「好機を逃さない」という意味になりました。
tide は「潮、干潮、潮流、流れ、傾向」など多様な語義があります。たとえば high tide は「満潮」の他に「全盛期」という意味ですし、low tide は「干潮」並びに「どん底」のことです。また、row against the tide は「潮の流れに逆らってこぐ」の他に「困難と戦う」、一方、the change of tide は「潮の変わり目」「危機」という意味です。考えてみたら日本語でも「流れに乗る」「流れに身を任せる」といった表現がありますよね。
なお、英語で「光陰矢のごとし」「歳月人を待たず」は Time and tide stay for no man.と言います。時間も潮流も人を待ってくれない、ということです。
4.The ebb and flow of the market is unpredictable. (市場の盛衰は予測できません。)
ebb and flow は「(潮の)干満」のことです。ebb は「引き潮」、flow は「満ちてくる潮」のことです。この表現は他にも「(人生や事業の)盛衰」という意味もあります。この表現が誕生したのは一説によると1500年代後半だそうです。
なお、関連表現としては、be at the ebb(事物が衰退期にある)というフレーズもあります。また、ebbは動詞として「潮が引く」「活気などが弱まる」という意味でも使われます。たとえば ebb away(だんだん衰えていく)、ebb back(盛り返す)などです。日ごろ名詞としてなじみのある単語も、辞書を引いてみると動詞の使い方があることがわかります。私は紙の辞書を愛用しているのですが、紙版ですと斜め読みしながらザッと語義を調べることができます。そうした「寄り道」も楽しいですよね。
柴原 早苗
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科兼任講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。
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