ワンランクアップの英語表現
2013.08.01
スキルアップ
第50回 お腹関連の表現
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
今月は「お腹」に関連する表現を見てみましょう。日本語でも「腹を据えて」「腹黒い」などがありますが、英語ではどうでしょうか?

1. He has fire in his belly. He really wants to become a company president.(彼は野心があります。会社の社長にとにかくなりたいようですよ。)
fire in one’s belly は「野心」という意味です。fire in the belly と定冠詞の the も使われます。なお、「お腹」と一言で言っても、「胃」と「腹部」がありますよね。英語で「胃」は stomach、幼児語では tummy と言います。一方、「腹部」は belly、解剖学ではabdomen です。ちなみに「腹筋」は abdominal muscles で複数扱い、「腹筋運動」は sit-up と表現します。
2. We are experiencing a stomach-churning period of uncertainty. (私たちは胃が痛くなるような不安定な時期を経験しています。)
stomach-churning は「胃が痛くなるような、胸を悪くさせる、むかつく」という形容詞です。churn という動詞は「(胃が)むかつく」「(心などが)激しく揺れ動く」といった意味をも持ちます。churn は名詞としても使われ、「攪乳器」という、バターを作る器材を指します。上記フレーズのイメージとしては、胃袋の中をひっかきまわされるような感じでしょう。
3. Since it was my first performance, I had butterflies in my stomach.
(初めての公演だったので、ものすごくドキドキしてしまいました。)
have (get,feel) butterflies in one’s stomach(tummy) は「はらはらする、そわそわして落ち着かない」という意味の口語表現です。胃の中で蝶々がバタバタ飛んでいるという状況を比ゆ的に表したものです。butterfly は複数形の butterflies となるので注意しましょう。ちなみに「人前であがること」は stage fright と言います。まさに「舞台(stage)」と「恐怖(fright)」ですよね。
4. The soldiers are so exhausted. They have no stomach for another war.
(兵士たちはあまりにも消耗しています。新たな戦争をする気にはなれません。)
have no stomach for…は「~する気が起きない、~したくない」という意味です。do not have the stomach for…と言い換えることもできます。反対表現は have the stomach for…(~をする勇気や決意がある)です。
ところで stomach は名詞として使われることがほとんどですが、実は動詞としても用いられます。「~を食べる、消化する」という意味の他に、「(侮蔑などに)耐える」「~を立腹させる」という語義があります。動詞の場合の変化は stomachs、stomaching、stomached です。こうした変化を辞書で一つ一つ確認するのも、思いがけない発見があって楽しいものです。
お腹関連の表現をもう少々。「おへそ」は navel、口語では belly button と言います。「腹式呼吸」は abdominal breathing、「みぞおち」は solar plexus、「割れた腹筋」は six pack です。一つのテーマをきっかけに色々と関連表現も合わせて覚えるのも、単語力増強の近道ですよね。
柴原 早苗
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科兼任講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。
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