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ワンランクアップの英語表現

2013.09.02

スキルアップ

第51回 乗り物を使った表現

第51回 乗り物を使った表現

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

今回のテーマは「乗り物」です。英語には乗り物を使った表現が色々とあります。早速見てみましょう。

1. Jim threw Mark under the bus to save his project.(ジムは自分のプロジェクトを守るために、マークを犠牲にしました。)

throw 人 under the bus は、「人を犠牲にする」という意味です。自分が利益や恩恵を受けるために、他人を犠牲にすることを意味します。
この表現の元になっているのは、「街中の満員バスの下で人がつぶれる」という状況です。市内を走るバスは汚れており、しかも満員バスであれば重量も重くなります。そうしたバスに押しつぶされてしまう、つまり、人々のために犠牲になるということを表しているのです。似たような表現に throw 人 to the wolves があります。wolves はオオカミ(wolf)の複数形です。何となく状況が想像できますよね。

2. Music is the vehicle for her ideas.(音楽は彼女の思想の伝達手段です。)

vehicle for … は「~の伝達手段」という意味です。元々 vehicle は「乗り物、輸送機関」を指し、陸上を動く乗り物を指しています。また、vehicle は車、バス、自転車などの上位語にあたります。ここで使われている vehicle は正式な場面で使われる際には「手段、媒体」という意味になります。他の表現ではmeansもあります。ちなみに vehicle for … はテレビや映画の世界では「見せ場」という意味にもなります。

3. I don’t know how he got his new TV – probably off the back of a lorry.(彼がどうやって新しいテレビを入手したか分からない。もしかしたら盗品かもしれない。)

lorry はイギリス英語で truck(トラック)のことです。日本語でも「タンクローリー」という語がありますが、これももとは tank lorry から来ていますよね。
off the back of a lorry は「盗品」のことですが、「トラックの荷台から落ちてしまう」という状況から来た表現です。lorry の代わりに truck を使うこともできます。この言い回しがなぜ誕生したのかは定かではありませんが、一節によると、第二次世界大戦のころから使われていたのではとも言われています。

4. In order to improve, you just have to keep on trucking.(向上するためには、とにかくやり続けるしかありません。)

keep on trucking はインフォーマルな場面で使われる表現で、「やり続ける、いつも通りやる」という意味です。相手を励ます際によく使われるフレーズです。You are doing great! Keep on trucking!(ちゃんとやっているよ!そのままで大丈夫!)という状況でも用いられますので、日本語の「頑張って!」というニュアンスでも使うことが可能です。
truck という名詞自体も動詞で使うことができます。動詞の場合は「トラックを運転する」「歩く、進む」という意味にもなります。なじみのある名詞にも動詞の用法があるのは興味深いですよね。

今回は乗り物関連の表現をご紹介しました。よく知っている簡単な単語にも、実はたくさんの意味が潜んでいます。ぜひご自分で辞書を調べて、新たな意味を見つけ出すという楽しい作業にも従事してみてください。


柴原 早苗
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科兼任講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。

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