ワンランクアップの英語表現
2014.01.08
スキルアップ
第55回 重複する単語
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
今回は重複する単語について見てみましょう。英語では reduplication と言います。日本語でも「ワーワー」「ゴツゴツ」という擬声語や擬態語がありますよね。英語ではどうでしょうか?

1.My desk is in a mess! Files are scattered helter-skelter.(私の机は散らかっているわ!ファイルがゴチャゴチャになっているのよ。)
helter-skelter は「混乱した」という形容詞です。上記の例文では、ファイルが散乱している様子を表しています。
この言葉が誕生したのは16世紀末で、一節によると、中英語の skelt(急ぐ)という単語から由来しているようです。前半の helter は純粋に韻を踏むために付けられたとされています。
ところで mess は「散らかしたもの、散乱」という意味ですが、辞書を引くと他にも色々な意味があるのがわかります。軍事用語では mess は「食堂」という意味で、The military officers are at mess.(陸軍将校たちは会食中です。)となります。こちらはフランス語の mets(料理)から来た単語です。
2.The meeting did not go well. It was a mishmash of different ideas.(会議はうまくいきませんでした。異なる考えの寄せ集めでしたね。)
mishmash は「ごた混ぜ、寄せ集め」という意味です。最初に使われたのは15世紀ごろだそうで、語源は中英語およびイディッシュ語とされています。土台となった単語は mash(「飼料、麦芽汁、どろどろになったもの」「すりつぶす、どろどろにする」)だそうです。イギリス英語でmashと言えば、マッシュポテトを意味します。
例文1同様、何かがぐちゃぐちゃした状態を表すのが mishmash ですが、似たような表現では他にも hodgepodge や jumble があります。
3.I couldn’t understand the document. It was full of legal mumbo jumbo.(その文書は全然分からなかった。法的な専門用語がちんぷんかんぷんだったから。)
mumbo jumbo は「ちんぷんかんぷん、訳のわからない言葉」という意味です。この言葉が使われるようになったのは18世紀ごろです。元々 Mumbo Jumbo(マンボージャンボー)はスーダンのマンディンゴ人の守護神を指します。
「ちんぷんかんぷん」は他にも abracadabra、giberrish、jabberwocky などがあります。こうした英語自体も、発音が特殊ですよね。なお、「ちんぷんかんぷん」は漢字で表すと「珍紛漢紛」と書きます。漢字だと「よく分からない様子」がより表れているような気がしませんか?
4.The car in front of us zigzagged through the traffic.(前の車は、車の間をジグザグに通り抜けました。)
zigzag は名詞で「ジグザグ(形のもの)」、あるいは形容詞で「ジグザグの」という意味がありますが、実は動詞でも使われます。zigzag と単体で用いるほか、zig および zag と単体でも使えます。たとえば、 In the beginning, we zigged, then we zagged.(最初はあちらの方向に動いて、次はこちらの方向へ向かった。)という具合です。最終的にジグザグのコースをたどるような動きを表します。
zigzag は元々ドイツ語の Zacke(のこぎりの歯)から来ているそうです。なお、日本ではジグザグに縫う「ジグザグミシン」がありますが、これは英語で zigzag sewing machine と言います。
似たような発音を繰り返したり、韻を踏んだりする単語は英語でもたくさんあります。そうした単語の語源を調べてみたり、発音してみたりというのも英語学習では楽しい作業です。
柴原 早苗
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科兼任講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。
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