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ワンランクアップの英語表現

2019.09.03

スキルアップ

第123回 魚が出てくる英語表現

第123回 魚が出てくる英語表現

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

 


a red herring 人の気をそらすもの

The President dismissed the information as a red herring.  (大統領はその情報について人の気をそらすものだとして片づけました。)


「人の気をそらすもの」は英語でa red herringと言います。他にも「おとり」という語義もあります。herring自体はニシンのこと。red herringはもともと狩猟に出てくる用語です。猟犬の訓練をする際、燻製ニシンをあえて道にこすりつけ、嗅ぎ分けられるようにさせていました。そこから「おとり、気をそらすもの」という意味になったのですね。なお、ニシンの幼魚は英語でsardinesです。次の例文でsardinesは取り上げます。

ところで日本語の「おとり」は漢字で「囮」「媒鳥」と書きます。「囮」は音読みで「カ」「ガ」、訓読みが「おとり」です。「口(くにがまえ)」は囲いのことで、「化」は「かわる」という意味です。囲いの中に野生の鳥獣を入れて慣らし変えていくことからこのような漢字になったそうです。


be packed like sardines すし詰めになっている

The train was packed like sardines. (電車はすし詰め状態でした。)

「非常に混んでいる、すし詰め状態である」を英語でbe packed like sardinesと言います。sardineは「欧州産イワシの幼魚」のことで、缶詰め用として使われます。語源はラテン語のsardaで、地中海のサルディニア島(Sardinia)も同じ語源です。

なお、アメリカには子どもの遊びでSardinesというものがあります。これはかくれんぼの一種なのですが、一人が隠れて残りの子どもたちが探し出し、見つけると皆で集まっていくというものです。詳しくはこちらに出ています:https://www.wikihow.com/Play-Sardines


a sprat to catch a mackerel 海老で鯛を釣る

Their marketing strategy is like a sprat to catch a mackerel(彼らのマーケティング戦略は、まるで海老で鯛を釣るようなものだ。)

この表現が誕生したのは19世紀始めだそうです。spratとは「ニシン科の小魚、スプラットイワシ」のことで、大西洋東部で獲れます。魚の意味の他に「取るに足らないもの」という語義もあります。一方、mackerelは北大西洋産のサバの一種です。日本語では「エビ」と「タイ」が出てきますが、英語では「ニシン」と「サバ」というのも興味深いですよね。

なお、「海老で鯛を釣る」は他にもcatch a bream with a shrimpと言います。breamは「タイ科の魚」です。一方、英語で「エビ」はいくつか単語があり、shrimpは「小エビ」、prawnは「クルマエビ」の一種で、shrimpよりは大きいサイズ。一番大きいのがlobsterです。


like a fish out of water 場違いな

Among many professionals, I felt like a fish out of water.  (多くのプロの中に混じった私は、場違いな場所にいると感じました。)

このフレーズはそのまま訳すと「まるで水から出た魚のような」となります。そこから転じて「場違いな」という意味になりました。「場違いな所でドギマギしている人」をa fish out of waterと言います。

英語にはfishを使った表現が色々とあります。たとえばa big fish in a little pondは「お山の大将」、fish in troubled watersは「火事場泥棒を働く」、fish or cut bait(するかしないかはっきりさせる)などはその一例です。

いかがでしたか?今月は魚をテーマにした英語表現をご紹介しました。

ところで私は通訳者デビューして間もないころ、とあるレセプション通訳を担当したことがあります。場所はホテルの宴会場。外国のお客様をもてなすべく、たくさんの日本料理がふるまわれていました。お寿司やお刺身など、海外ゲストにとっては珍しい魚が並んでいましたね。早速お客様からは魚の名前の英訳を尋ねられたのですが、さあ、大変!「タコ」や「イカ」「鮭」などは訳せたのですが、「スズキ」「カンパチ」「カワハギ」あたりになると、私の通訳力はおろか、そもそもの日本語でもわからないという状況になりました!冷や汗をかきながらの通訳でしたね。

季節は間もなく秋。みなさんも秋が旬のお魚を味わってくださいね。


柴原 早苗
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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