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ワンランクアップの英語表現

2021.04.01

スキルアップ

第142回 「-cketが語尾につく単語を使った英語表現」

第142回 「-cketが語尾につく単語を使った英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

 

放送通訳現場で興味深いフレーズに出合うと、「似たような単語を使った表現は他にあるかしら?」「反対語は?」という具合に、関心が高まります。たとえば、stationery(文房具)という語が出てくると、「他に-neryを使った単語は?」と探したくなるのですね。


今回ご紹介するのは、-cketで終わる単語を用いたフレーズです。早速見てみましょう。


1  deep pockets (十分な資金)

Because the company had deep pockets, they hired an excellent lawyer.  (その会社は十分な資金を有していたため、素晴らしい弁護士を雇いました。)

「十分な資金」を口語英語でdeep pocketsと言います。文字通り訳せば「深いポケット」ですよね。この表現が誕生したのは1970年代後半だそうです。確かにポケットが大きければ、たくさんの現金を入れておけそうです。

ところで日本語で「資金が豊富にあること」を「潤沢」と言います。なぜ「潤う」「沢」とお金が結び付いたのでしょう?調べたところ、「沢」には「大量の、多数の」という意味があるそうです。確かに「沢山」も「沢」と「山」ですよね。ちなみに「沢」の旧字体は「澤」で、「さんずい」に「睪(えき)」です。「睪」は「次々に手繰り寄せる」という意味です。


2  on a sticky wicket (厄介な状況にある)

She was on a sticky wicket, but she managed to overcome the problem.  (彼女は厄介な状況に置かれていましたが、その問題を克服することができました。)

-cketで終わる単語でスポーツニュースによく出てくるのがwicketです。これはクリケット競技のwicket(投球場)のことで、a sticky wicketを文字通り訳せば「ねばねばする投球場」のことです。たとえば雨などの後、地面がぬかるんでいるとボールがよく弾みませんので、打者にしてみればまさに厄介な状況となりますよね。

on a sticky wicketは主にイギリスで使われる口語表現です。クリケットの国・イギリスではクリケットに関するフレーズが結構あります。一例としてto have a good innings(天寿を全うする)、to be bowled over(圧倒される)などが挙げられます。


It’s not rocket science (難しいことではない)

It’s not rocket science.  All you have to do is press the button. (難しいことではないですよ。ボタンを押せば良いだけです。)

rocket scienceは「ロケット科学」のことですが、口語表現で「難しいこと」という意味もあります。用法としては通常、否定形となります。似たフレーズではIt’s not brain surgeryがあります。こちらも「簡単である」という意味です。

ところでlocketも日本語ではカタカナの「ロケット」で、こちらは小型写真や形見などを入れる小さな箱です。ネックレスのチェーンに下げますよね。locketと入力して画像検索で絞り込むと、ハートの形のタイプが沢山出てきます。


a ticket to success (成功への切符)

She graduated from a prestigious university.  That’s a ticket to success(彼女は名門大学を卒業しました。それは成功への切符ですよね。)

ticketは「切符、チケット」のことですが、比ゆ的に「手段、~への切符」という意味もあります。a ticket to successは「成功への切符」です。一方、同じticketでもparking ticketは「駐車違反切符」、a speeding ticketは「スピード違反切符」のことです。ちなみに「駅の改札口」はticket wicketです。韻を踏んでいますよね。

ところでsuccessは英語の場合、アクセントがceの上に来ます。しかし、テレビCMに出てくる商品名などは「サ」を強く読んでいます。一方、awardは英語風に発音すれば「アウォード」ですが、日本では「○○アワード」になっているのですね。アクセントの位置や実際の発音など、カタカナの単語は注意が必要です。

以上、今月は-cketが語尾につく単語を用いたフレーズをご紹介しました。「チケット」と言えば、コンビニで印刷されるコンサートや映画館のチケットの座席番号、もう少し大きいフォントだとありがたいなと思います。会場内は薄暗くて読むのに一苦労だからです・・・!


柴原 早苗
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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