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ワンランクアップの英語表現

2021.05.06

スキルアップ

第143回 「裁縫関連の単語を使った英語表現」

第143回 「裁縫関連の単語を使った英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

私の友人でお裁縫が大好きな人がいます。「何度も引越経験があるけれど、テレビは不要だった。でもミシンだけは絶対に持っていったのよね」と述べていました。一方、私の裁縫能力はボタン付けがやっと。子どもたちが小さい頃、習い事バッグや幼稚園関連の袋物などは全く縫えず、実家の母に作ってもらったことがありました。


今月は裁縫関連の単語を使った英語表現をご紹介します。


1  as bright as a button(非常に賢い)

Her daughter was as bright as a button. (彼女の娘さんは非常に賢かったですね。)

「頭の回転が速い、非常に賢い」を口語表現でas bright as a buttonと言います。文字通り訳せば「ボタンのように輝いている」となりますよね。この表現が生まれたのは19世紀で、おそらく兵士の軍服にあるボタンが光り輝いていたからだ、という説が濃厚のようです。このフレーズは特に「子どもが賢い場合」に使われることが多いそうです。

ところでbuttonは日本語だと「ボタン」となりますが、butterは「バター」ですよね。日本に最初に入ってきた際、発音を決めた人によって、その後も受け継がれていったのでしょうか?気になります。


2  off the cuff (形式ばらない)

He is known as a broadcaster who conducts off the cuff interviews. (彼は形式ばらないインタビューをするキャスターとして知られています。)

cuffはワイシャツなどの袖口、袖カバーなどの意味があります。一方、「形式ばらない」を英語ではoff the cuffと言うのですね。この表現は19世紀半ばに誕生しており、もとは「メモをシャツの袖口に書く」様子を表していたのだそうです。特に俳優などがセリフを覚えきれず、袖口に書いていたことからこのフレーズが生まれました。

ところで通訳ブースの中には「カフボックス」なるものがあります。これはマイクをオンまたはオフにする装置のことで、ここに出てくる「カフ」はcough(咳)から来ているのですね。マイクをオンにすることを、放送業界では「カフを上げる」と言っています。


3  stick to one’s knitting (自分のことに専念する)

Although there was a lot of noise from the crowd, the golfer stuck to his knitting and won the tournament. (観客からのザワザワ音が沢山あったものの、そのゴルフ選手は自分のことに専念し、大会で優勝しました。)

「自分のことに専念する」を英語ではstick to one’s knittingと言います。knittingは「編むこと、編み物製品、編み物」という意味。編み物をする際には多くの集中力が求められます。そこから転じてこのフレーズが生まれました。

ちなみに「編み物をする」はknitまたはdo knittingと言います。


hang by a thread (いつ首になってもおかしくない、危機一髪である)

Since I made a huge mistake at work, I guess my job is hanging by a thread(職場で大きなミスをしてしまったため、どうやら私はいつ首になってもおかしくないでしょう。)

「いつ首になってもおかしくない」を英語でhang by a threadと言います。語源はギリシャ神話にあるThe Sword of Damocles(ダモクレスの剣)から来ています。これはダモクレスという臣下が王の立場を羨ましく思っていたものの、王が彼を王座に座らせ、その上に今にも落ちてきそうな一本の剣を吊るしたエピソードから来ています。王は彼に「自分のような立場の人間は常にその座を脅かされている」ということを伝えたかったのです。

ところでロンドンにはThreadneedle Street(スレッドニードル街)という通りがあります。その角にあるのがイギリスの中央銀行であるThe Bank of England(イングランド銀行)です。イングランド銀行の別名は”the Old Lady of Threadneedle Street”です。なぜこのような名前になったのか、興味がある方は以下のサイトをどうぞ:

https://www.bankofengland.co.uk/knowledgebank/who-is-the-old-lady-of-threadneedle-street

以上、今月は裁縫関連の単語を使った英語フレーズを見てみました。ところでイギリスで数年前に放映された裁縫バトル番組”The Great British Sewing Bee”はNHKのEテレで「ソーイング・ビー」というタイトルで放送されています。楽しい番組ですよ。


柴原 早苗
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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