ワンランクアップの英語表現
2021.07.01
スキルアップ
第145回 「七夕から連想する単語を使った英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
7月7日は七夕です。幼少期に自宅で笹を飾り、願い事を短冊に書いたことを思い出します。最近は公共の場所にも笹が置かれていたりしますよね。近所の子どもたちが願い事をかわいい字で書いて掲げている様子は、ほほえましいものです。

今月は「七夕」から連想する単語を用いたフレーズをご紹介しましょう。
1 reach for the stars (高望みする)
He reached for the stars in the industry, but his character did not match up. (彼は業界内で高望みをしたものの、人格が伴いませんでした。)
「高望みをする」を比喩的表現でreach for the starsと言います。文字通り訳せば「星に手を伸ばす、星をつかもうとする」です。実現困難なことを試みている様子が分かりますよね。
starは「星」のことですが、幼少期に私が通っていたイギリスの小中学校では、課題の成績にstarというものがありました。これはA+よりも上の評価であり、滅多に先生も与えて下さるものではありませんでした。もしstarを得た場合は、朝礼で全校生徒の前で名前が読み上げられます。私は転入当時、英語が全くできず、成績もさんざんだったのですが、歴史の授業で飾り文字を描くという課題でstarをいただいたことがありました。それまで自信がない暗い学校生活でしたが、とても励みになったことを覚えています。
2 a galaxy of … (きらぼしのような~)
The film was performed by a galaxy of famous actors. (その映画にはきらぼしのような映画スターたちが出演していました。)
galaxyは「銀河、星雲」のことですが、a galaxy of … で「きらぼしのような~、華やかな~」という意味になります。語源はギリシャ語の「天の川」から派生したもので、galacto-という接頭辞は「乳」という意味もあるのですね。よって「銀河」をMilky Wayと言うのも、ここから来たわけです。
なお、Milky Wayで思い出すのが、チョコレートバー「ミルキーウェイ」。とても甘~いチョコです。イギリスに留学していたころ、クラスメートがよく授業の合間に食べていました。
3 get weaving (〔仕事などに〕本気で取り掛かる)
Since we enjoyed our holiday, it is time to get weaving! (休暇も楽しんだことだし、そろそろ仕事に本気で取り掛かろう!)
get weavingは主にイギリスで使われる口語表現で、「仕事などに本気で取り掛かる」という意味です。weaveは「(ひもなどを)織る」ことです。七夕における「織姫」は「機(はた)を織る女性」という意味であり、織姫は機織り上手の働き者だったとされています。かつての七夕では、裁縫や手芸の上達を願う習慣があったのです。
ちなみにweaveは「織る」という語義の他にも、クモなどが巣を「張る」という意味や、「ジグザグに進ませる」といった様子も表します。意味が色々とある単語です。
4 till the cows come home (長い間、いつまでも)
You can keep talking till the cows come home, but unfortunately, I can’t agree with you. (いつまでも話していても構わないけれど、残念ながら私はあなたの意見には賛成できない。)
七夕に出てくる「彦星」とは「牽牛星(けんぎゅうせい)」のことで、牽牛とは「牛飼い」です。そこで最後にご紹介するのがtill the cows come home。文字通り訳せば「牛が小屋に戻ってくるまで」です。「牛は放っておくと、いつまでも戻らない」という様子から生まれました。tillの代わりにuntilを使うこともできます。このフレーズも口語表現です。
ところで「うし」は日本語で「牛」の他に「丑」という字があります。こちらは十二支の第二、動物では牛を表します。方位では北から30度東寄り、時刻では午前1時から3時ぐらいまでを意味します。「草木も眠る丑三つ時」(夜が更けてあたりが静かである様子)の「丑」ですよね。
今回は「七夕」から連想する単語を使ったフレーズを見てみました。かつて幼い頃、私は七夕飾りを折り紙で作ったことがあります。飾りにも色々とあり、「くずかご」「網飾り」などがその一例です。形が気になる方はぜひ画像検索なさってくださいね。
柴原 早苗
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。
この記事をシェアしませんか?
