ワンランクアップの英語表現
2021.08.03
スキルアップ
第146回 「海に関連した英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
今年はオリンピックがあるので国民の祝日が移動しましたよね。本来の「海の日」は「7月の第3月曜日」ですが、2021年は7月22日となりました。ちなみに「海の日」は、日本が海に囲まれ、豊かな自然や食などの恵みを受けていることから、それに感謝するという意味で制定されました。日本の童謡には「海(うみは広いな大きいな)」や「われは海の子」など、海洋にちなんだ曲もあります。「海」が発表されたのは1941年3月。その9か月後に日本は太平洋戦争に突入します。あれから数十年経った今、こうして平和を享受できることに感謝です。

今月は、海に関連した英語表現を見てみましょう。
1 harbor (好ましくない感情を抱く)
I respect my teacher because she doesn’t harbor any negative thoughts towards her students. (私は先生のことを尊敬しています。なぜなら学生たちにマイナスの感情を抱いていないからです。)
harborは「港、入江」という意味ですが、動詞として使うこともできます。上記の例文は動詞で「好ましくない感情を抱く」ということです。harborは他にも「犯人などをかくまう」という意味もあります。
ちなみに「港」には2つの単語があります。harborは「自然の地形を活用して人工の防波堤を建設した避難港」ですが、portは「商業港で街も含む」という意味です。ところでワインに「ポートワイン(port wine)」という甘めの種類があります。これはポルトガルのオポルト(ポルト)港から積み出されたことからついた名称です。
2 make waves (波風を立てる)
Don’t make waves because it is always best to stay calm. (波風を立ててはいけないよ。いつも落ち着いている方が最善策なのだから。)
「波風を立てる、波乱を引き起こす」を口語英語でmake wavesと言います。文字通り訳せば「波を作る」ですので、日本語の「波風を立てる」と似ていますよね。この場合、否定的なニュアンスが多いのですが、その一方"make waves over the world"(世界中で話題になる)といった用法もあります。
なお、waveは「波」を表す一般語ですが、他にもripple(さざ波)、breaker(砕け波)やsurf(砕け波の集合名詞)などがあります。こうした違いをその都度確認する習慣をつけておくと、類語も増えていきます。
3 a drop in the ocean (焼け石に水)
Don’t assume that your effort is a drop in the ocean. I am sure it will lead to a better future. (あなたの努力を焼け石に水などと思わないで。より良い未来にきっとつながると思うよ。)
a drop in the oceanは「焼け石に水、大海の一滴」という意味です。確かに大量の水が存在する「海」において「たった一滴」というのは小さく思えますよね。
ところで固い飴の「ドロップ」の英語は同じくdropです。語源の理由は「お鍋の中にお砂糖と香料を落とすから」だそうです。
4 ripple effect (連鎖反応)
Due to the pandemic, many companies are facing a ripple effect. (パンデミックにより、多くの企業が連鎖反応に直面しています。)
rippleは「さざ波」のことで、ripple effectは「連鎖反応」と訳されます。effectは「効果」の他に、このような「反応」という意味もあるのですよね。なお、rippleの語源はrip(引き裂く)とle(反復)が組み合わさったものです。さざ波が立つ様子は確かに矢継ぎ早に引き裂く様子を連想しますよね。
ところで国語辞典で「さざ波」を調べたところ、琵琶湖の南西地方を指す語でもあるそうです。一方、「さざ波せんべい」という和菓子もあります。気になる方はぜひ画像検索してみて下さいね。写真を見ると「あ、あのお菓子!」と気づくはずです。
今回は「海」に関連したフレーズをご紹介しました。ちなみに8月のメインの星座は「しし座」。でも「しし座流星群」は主に11月に出現します。天体の世界も奥が深いですよね。
柴原 早苗
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。
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