ワンランクアップの英語表現
2021.12.01
スキルアップ
第150回 「波や海に関連した用語を使った英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
私は暦や記念日などに関心があり、「今日は何の日?」といった情報に注目しています。日にちだけでなく、「○○週間」「△△月間」などにも関心があるのです。以前読んだ記事に「毎年12月は地球温暖化防止月間」という記述がありました。これは平成9年に京都で開催されたCOP3を機に定めたそうです。今年度からは6月の環境月間に統合されています。

10月末にはCOP26がグラスゴーで開催されましたよね。そこで今回はそこから連想し、波や海の用語を使ったフレーズを見ていきましょう。
1 coast (努力もせずにやってのける)
The millionaire's son coasted to fame thanks to his father's wealth. (百万長者の息子は、父親の財産のおかげで努力もせず有名になりました。)
coastは「海岸、浜辺」という名詞の他、動詞としても使えます。上記の例文は「苦労せず順調に進む、努力もせずにやってのける」という動詞での用法です。coast toの他にもcoast intoやcoast alongといった形で使われます。
coastの語源はラテン語のcosta(肋骨、側面、壁)から来ています。中南米の国Costa Rica(コスタ・リカ)は「富める海岸」というスペイン語です。一方、スペイン南部にはCosta Del Sol(コスタ・デル・ソル。太陽海岸の意)というリゾート地もあります。
そう言えば最近日本に進出してきたCosta Coffeeですが、20年前に暮らしていたイギリスでは大人気のカフェチェーンでした。
2 make waves across the country (全国で話題になる)
The new film is making waves across the country. (その映画は全国で話題になっています。)
make waves across the countryは「全国で話題になる」、つまり、「大ヒットする」という意味です。似たような用法ではmake waves at the box office(映画が大ヒットする)という言い回しもあります。ただ、make waves単体では「波風を立てる」という否定的なニュアンスを持ちます。ヤヤコシイですよね。
ところでcountryは「国」ですが、nationとの違い、みなさんは答えられますか?英語の勉強をする際には、ぜひ類語を調べてその差を把握してみて下さい。正解は「country=地理に重点を置いた国家」「nation=国民に重点を置いた国家」「state=政治体制に重点を置いた国家」のことです。
3 gulf (大きな隔たり)
I want to be an academic because I want to solve the gulf between the haves and the have-nots. (私は学者になりたいです。なぜなら持てる者と持たざる者の格差を解決したいからです。)
「大きな隔たり、深い溝」を英語でgulfと言います。gulfには「入海、湾」という意味もありますよね。Persian Gulf(ペルシャ湾)、Gulf of Mexico(メキシコ湾)などが有名です。ちなみに「湾岸戦争」はThe Gulf Warと言います。
上記例文の「持てる者」「持たざる者」はthe haves、the have-notsと言います。要は貧富や格差のことです。最近のニュースではdisparity(格差)がよく使われます。
4 go with the tide (時流に合わせる)
It's your life. You don’t have to go with the tide. (あなたの人生なのだから。時流に合わせなくても良いのよ。)
tideは「潮の流れ、潮流」という意味の他にも、物事の「動き、潮流」といった語義があります。go with the tideは「時流に合わせる」です。反対語はgo against the tide (時流に逆らう)となります。
アメリカのバンドBlondieは1980年に"The Tide is High"という曲をリリースしています。high tideは「絶頂期」という意味で、歌詞は「モテモテの男の子を絶対に振り向かせる」という内容です。オリジナルは1967年にリリースされたレゲエ曲です。なお、この曲の邦題は「夢見るNo.1」ですので、意訳されていることがわかりますよね。
いかがでしたか?以前もこのコラムで海や波に関する表現をご紹介したことがあります。私自身、今回執筆をしながら、こうした単語にはまだまだ多くの意味があることを発見した次第です。勉強は続きます!
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。
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