ワンランクアップの英語表現
2022.09.01
スキルアップ
第159回 「topを用いた英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
子どもの頃に苦戦した遊びの一つに「こま回し」があります。ひもでぐるぐる巻いて勢いをつけてパッと手を放す、あのこま回しです。簡単そうですが、いざやってみるとすぐに傾いてしまいますよね。ちなみにあの「こま」は英語でtopあるいはspinning topと言います。初めて聞いたときはなぜ「上」と同じtopなのか疑問に思ったものでした。「こま」のtopは14世紀ごろ生まれた単語ですが、語源は不明なのだそうです。

そこで今月は「こま」ではなく、「上」を表すtopを使ったフレーズをご紹介します。「上」のtopは12世紀以前の古英語で、「頂上」という語源です。
1 the top 上座
The chairman was seated at the top of the table. (会長は上座に座りました。)
「上座」は英語でthe topと言います。上記の例文はThe chairman was seated at the head of the tableと言い換えることも可能です。また、be seatedの代わりにbe placedも使えます。ややこしいのはthe top of the tableには「テーブルの表面」という意味もあること。” My son banged the top of the table” であれば「うちの息子が卓上を叩いた」という意味になります。
なお、日本語では「上座に座る」のほかに「お客様を上座に据える(すえる)」という言い方もあります。一方、中華料理の丸テーブルの上座は出入り口の反対側です。「上座」一つをとっても表現やマナーなど、色々とありますよね。
2 at the top of one’s game 絶好調で
She suffered so much in the past but now, she is at the top of her game. (彼女は過去に本当に苦しみましたが、今や絶好調です。)
「絶好調である」を英語でat the top of one’s gameと言います。on top of one’s gameも同じ意味です。「絶好調」はbe in perfect conditionの他、top form、be in excellent shapeなどがあります。日英同時通訳の際に色々と使い分けができると、表現も多岐にわたりますよね。一つのフレーズを覚えた際には類似表現を「ついでに」調べると語彙力アップにつながります。
ちなみにイギリスの小学校時代、体育の授業を”games”と呼ぶクラスメートがおり、「試合」を意味することが分からなかった私は一瞬戸惑いました。他にも”gym”(体操競技)といった言い回しもありました。
3 off the top of one’s head 思い付きで
Don’t worry. It just came off the top of my head. (心配しないで。単なる思い付きだから。)
「思い付きで」を英語でoff the top of one’s headまたはout of the top of one’s headと言います。文字通り訳せば「頭のてっぺんから出た」という感じですよね。何となくイメージしやすい表現です。
ところで英語で「分数」をfractionと言います。「分母」はdenominator、「分子」はnumeratorです。このnumeratorを子ども向け英語サイトで調べたところ、”The top half of the fraction”とありました。なるほど、分数の「上の部分」というわけですね。
4 stay on top of things きちんと把握する
I will work hard to stay on top of things. (状況をきちんと把握するよう努力します。)
「きちんと把握する」はstay on top of thingsと英語で表現します。「状況をおさえておく、つかんでおく」というニュアンスのあるフレーズです。ちなみにShe is on top of fashion trendsであれば「彼女はいつもファッションの流行に詳しい」という意味になります。
英日の同時通訳の際、「把握する」であれば一言graspが使われた方が正直なところ、私など訳しやすいと感じます。口語表現や句動詞の方がむしろ難しいのですよね。だからこそ勉強を続けていくのがこの仕事なのだと思います。
いかがでしたか?今月はtopを使ったフレーズをご紹介いたしました。ちなみにイギリスに暮らしていたころ大好きだった番組がBBC放映のTop of the Pops。放送開始は何と1964年で合計2200回以上も放送されたものの、音楽専門チャンネルが増えたため、2006年に番組終了となりました。時代の流れなのでしょうね。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。コラム執筆のほか「放送通訳者・柴原早苗」(https://note.com/sanaeinterpreter/) 更新中。
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