ワンランクアップの英語表現
2022.10.01
スキルアップ
第160回 「音楽用語を用いた英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
新型コロナウイルスが深刻な状況になった際、一番私にとって辛かったのが「コンサートの中止」でした。クラシックもロックも演奏活動は軒並みキャンセル。当時私は複数のチケットを購入しており、大阪や滋賀県まで聴きに行く計画を立てていたのです。それだけにとても残念に思いましたね。でも、最近は芸術活動も少しずつ復活しています。一方、動画サイトを見るとコンサートがそのままアップロードされているものもあります。ありがたい限りです。

今月は「音楽用語」を用いたフレーズをご紹介していきます。本コラムではこれまで2回、取り上げてきましたので、実に今回が3回目となります。
1 jazzy 鮮やかな、生き生きとした
The news presenter was famous for wearing a jazzy tie. (そのニュースキャスターは鮮やかなネクタイをしていることで有名でした。)
「生き生きとした、鮮やかな、華やかな」を英語でjazzyと言います。jazzy自体には「ジャズに似た、ジャズ風の」という語義もあります。形容詞であるjazzy、辞書をよく見ると比較級(jazzier)に最上級(jazziest)もありました!普段あまり耳にしないので、逆に新鮮に思えます。
さて、上記の例文ですが、実在するキャスターを念頭に作っています。イギリスの民放Channel 4の名物プレゼンター、Jon Snow(ジョン・スノウ)氏です。毎回テレビ画面で目を引くのが氏のネクタイ。いつも華やかです。毎日そのバリエーションを観るのも視聴者にとって楽しみなのでしょう。スノウ氏自身、ネクタイについて以下のサイトに詳しく綴っておられます:
https://www.channel4.com/news/by/jon-snow/blogs/how-my-expensive-obsession-for-ties-began
2 virtuoso 名人の
My best friend is a virtuoso listener. (私の親友は人の話を聞く名人です。)
virtuosoは音楽用語で「名人、巨匠、名演奏家」という意味です。元はイタリア語で、複数形はvirtuosiとなります。音楽用語から派生して「名人の」という形容詞としても使われています。
ちなみに「美徳、長所」を表すvirtueの語源は、virtuoso同様にラテン語のvirtus(道徳)から来ています。
3 operatic 芝居がかった
He showed an operatic despair and complained to the staff. (彼は芝居がかった失望感を示し、スタッフに苦情を言いました。)
operaticは「オペラ風の」という意味で、そこから派生して「芝居がかった」という語義もあります。なお、operaの発音記号をチェックしてみると、辞書の多くが「オ」よりも「ア」に近い記号を記しています。よって、発音は「アペラ」という感じです。
ところでオペラで思い出すのが、クイーンのアルバム”A Night at the Opera”(オペラ座の夜)。あの「ボヘミアン・ラプソディ」が収録されています。
4 trumpet 自画自賛する
I don’t want to trumpet, but I think I did well in my exam. (自画自賛するのは嫌ですが、試験はうまく行ったと思っています。)
楽器のトランペットは動詞で「吹聴する、自画自賛する」という意味を持ちます。確かにラッパを吹くと大きく周りに知らせることになりますので、イメージがつかみやすいですよね。ちなみにtrumpetの語源は古フランス語のtrump(らっぱ)から来ています。ところであのトランプ前大統領の祖父Friedrich Trumpf氏は19世紀にドイツから渡ってきた移民でした。アメリカ到着後は名前をFrederick Trumpに変えたそうです。
金管楽器つながりでもう一つ話題を。子どもの頃、私は切手を集めていたのですが、HELVETIAという国名が気になっていました。スイスのことです。さらに切手の柄にホルンが描かれたものをよく見かけました。
いかがでしたか?音楽関連の単語はいろいろな用途で使われています。そろそろ「芸術の秋」到来。今年の秋は大好きな音楽を堪能しつつ、音楽以外の英語表現探しの旅も続けたいです。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。コラム執筆のほか「放送通訳者・柴原早苗」(https://note.com/sanaeinterpreter/) 更新中。
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