ワンランクアップの英語表現
2022.12.01
スキルアップ
第162回 「音関連の用語を用いた英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
我が家には日めくりカレンダーがあり、格言や暦などが掲載されています。中でも興味深いのが各種の記念日。有名なものから一風変わったものまで出ています。ちなみに12月6日は「音の日」だとか。これはエジソンが蓄音機の音を再生させた日が12月6日だからだそうです。

今月は「音」にちなんだ英語フレーズを見てみましょう。
1 bellwether リードするもの、先駆者
Silicon Valley is a bellwether of the tech industry. (シリコンバレーはテクノロジー業界をリードしています。)
「業界などをリードする先導者」「流行の先端を行く人」を英語でbellwetherと言います。bellは「鈴、ベル」で、wetherは「去勢された牡羊、山羊」のこと。かつてこの動物に鈴をつけて先導させたことからbellwetherという語が生まれました。なお、wetherはweatherと同じ発音ですので紛らわしいですよね。
ところでSilicon ValleyのValleyは英語だと「ヴァリー」の発音。日本語は「バレー」で、こちらもややこしくなります。先日CNNのニュースでnonsenseが出てきた際、英語風に「ノンセンス」と訳したくなりましたが、日本語は「ナンセンス」。混同してしまいます。
2 sound off まくしたてる
Yesterday, I sounded off about my work but it’s much better to come up with constructive opinion. (昨日私は仕事についてまくしたててしまいましたが、建設的な意見を述べた方がよほど良いですよね。)
不平や不満などをまくしたてたりズケズケ述べたりすることを英語でsound offと言います。通常、後ろにはaboutが続きます。sound offはほかにも「名前を大声で呼ぶ」「ほらを吹く」「起床ラッパを吹く」などの意味があります。なお、soundのアクセントは冒頭のsoが強く読まれますが、日本語では「サウンド」と平たく読みますよね。英単語のlineも冒頭にアクセントがありますが、カタカナになると平坦です。
3 raise the alarm 警鐘を鳴らす
The professor raised the alarm about the possible spread of the disease. (教授は病気が蔓延する可能性があるとして警鐘を鳴らしました。)
「警鐘を鳴らす、警告する」を英語でraise the alarmと言います。raiseの代わりにsoundやgiveを使うことも可能です。
ところでこのalarm(警報、警報装置、目覚まし時計)ということば。「鳴る」「止める」で私はいつも混同してしまいます。「アラームが鳴った」はalarm went offで前置詞のoffを使うのですね。私の頭の中のイメージではどうしても「作動する=on」という感じ。そこで私なりに覚え方を工夫してみました。「かけていたアラームが解除される=offになる=鳴る」という具合です。
4 have all sorts of bells and whistles 多様なオプション機能が付いている
My new smartphone has all sorts of bells and whistles. I must get used to all of them! (私のスマートフォンには多様なオプション機能が付いています。全部になじまなければ!)
bells and whistlesは「おまけ、添え物」という意味です。コンピュータ用語では「オプション機能」という語義になります。語源を調べてみたところ、昔の移動遊園地にて披露されたオルガンにたくさんの鈴や笛が付いていたことから生まれたとされています。「オプション機能」として使われるようになったのは1980年代以降。まさにコンピュータの進化と共に頻繁にお目見えするフレーズとなりました。
ところでイギリスと言えばパブ。実に色々な名前のパブがありますが、パブの名前検索サイトで探したところ、bellが付くパブは何と120件もありました。やはり教会が各地にあることから、それにちなんでいるのでしょうね。whistleが付く店名も発見しました。試しにTokyoというパブ名を探したら、なんとNewcastle upon Tyneに一件!
https://www.pubnames.co.uk/index.php
以上、今月は音にちなんだ表現を見てみました。ところで通訳トレーニングにquick response(クイック・レスポンス)という瞬発力を鍛えるものがあります。これは単語を聞いたら即座に訳すというもの。この練習をする際、メトロノームがあるとスリル満点です。あまり速いとついていけませんので、できれば40BPMあたりが適切でしょう。ちなみにmetronomeは19世紀初頭にオランダ人のヴィンケルが発明、その後ドイツ人メルツェルが改良しました。metro-は「測定する」、-nomeは「規則」のことです。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当中。大学や企業での学習アドバイス経験多数。コラム執筆のほか「放送通訳者・柴原早苗」(https://note.com/sanaeinterpreter/) 更新中。
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