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ワンランクアップの英語表現

2023.01.05

スキルアップ

第163回 「deckを用いた英語表現」

第163回 「deckを用いた英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

 

2023年が始まりました。昨年はご一読いただきありがとうございます。今年もみなさまにとってお役に立てるような表現をご紹介してまいります。よろしくお願いいたします。

さて、私は幼少期にオランダで暮らしていました。風車やチューリップ、チーズで有名なオランダ王国は埋め立て地が多く、どこまで行っても一面が広大で平らでした。当時はまだ日本食料品店も少なく、わざわざ車でドイツのデュッセルドルフまで買い出しに出かけたこともありましたね。南部に差し掛かると山々が見えてきます。それが私に安らぎをもたらしてくれました。


今回ご紹介するのはdeckを用いた英語表現。deckの語源は中期オランダ語で、「覆い、屋根、覆うもの」という意味があります。では早速見てみましょう。

all hands on deck 総動員

We are facing our biggest rival. So, everyone, all hands on deck! (私たちは最大のライバルと直面している。だからみんな、総動員だ!)

「総動員、みんなで一丸となって取り掛かれ」という掛け声を英語でall hands on deckと言います。この表現の語源は、船舶の世界から来ています。handはここでは「水兵」を意味し、deckは「デッキ」のこと。嵐の際に水兵全員が出てきて、デッキで悪天候を乗り切るという様子から生まれたフレーズです。

handを辞書で引くと、「手」が最初の語義として出てきますが、「労力、人手」という意味も上の方に書かれています。一方、「特殊技能を持った専門家」という語義もあり、たとえばa real hand at poetry(詩が素晴らしくできる人)などといった用法でも使われます。シンプルな単語ほど、奥が深いことがわかりますよね。


clear the decks 片づける

Could you clear the decks so that I can put my stuff here? (ここに荷物を置きたいから、片づけてくれる?)

「片づける」を英語でclear the decksと言います。この表現もやはり海事用語であり、17世紀ごろに誕生したとされています。万が一の戦いに備えて船のデッキを片づけておくことは大事な作業だったのですね。現在のような「片づける」という語義になったのは19世紀ごろだそうです。

ところで例文のstuffは口語表現で「持ち物、所持品」を表します。ちなみにstuffed animalは「動物のぬいぐるみ」のこと。中に柔らかいものが詰められていますよね。


not play with a full deck 正直ではない

During the negotiation, he was not playing with a full deck(交渉の間、彼は正直ではありませんでした。)

not play with a full deckは「正直ではない」という意味です。たとえば協議や試合などで誠意を見せず、他者に不公平をもたらすような様子を指します。このフレーズが生まれたのは1500年代でした。課税がトランプの束に対してなされたからだそうです。通常であればトランプのカードは52枚。しかし、あえて51枚だけ買うことにより、税金を逃れた人がいたとのこと。よって、「不正」を表すようになりました。deckには「トランプの一組」という意味もあるのです。


hit the deck 地面に伏せる

When we heard the bang, we hit the deck. (バンという音がしたとき、私たちは地面に伏せました。)

hit the deckは「地面に伏せる」という意味です。口語表現として用いられています。なお、deckと一文字違いのduckは「アヒル」という意味の他に、「ひょいとかがむ」という語義があります。ボクシングに「ダッキング」がありますが、頭や体を急にかがめる、あのポーズです。


いかがでしたか?今月はdeckを用いた英語フレーズを見てみました。ちなみにdeckには「(新聞などの)袖見出し」という意味もあります。新聞記事には大きな見出しと少し小さなフォントの見出しがあります。大きい見出しを「主見出し」、要点を説明する部分を「袖見出し」と言うのです。気になる方は検索サイトで「袖見出し」と入力し、画像検索をしてみてくださいね。

ところで最近「昭和レトロブーム」が見受けられますが、私にとっての「昭和Xデッキ」と言えば、やはり「ステレオデッキ」。昭和時代はご家庭の「応接間」に「ステレオデッキ」が存在感を見せていました。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当。大学や企業での学習アドバイス経験多数。各種サイトでコラムも執筆中。

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