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ワンランクアップの英語表現

2024.07.02

スキルアップ

181回「skinを用いた表現」

181回「skinを用いた表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

かつてイギリスに暮らしていた頃に難儀したのは「冬の乾燥」。日本のように湿度がないため、あっというまにカサカサになってしまうのですよね。ドラッグストアで”deep skin moisture”表示があるクリームを選びました。一方、帰国後もなぜか季節の変わり目になると肌荒れを起こしてしまい、今年も同様です。皮膚の体質なのでしょうね。


そこで今月はskin(皮膚)を用いた英語表現を見ていきましょう。


get under someone’s skin (人を)好きになる

I didn’t like him at first, but after some time, he got under my skin. (最初は彼のこと好きじゃなかったけど、時間が経つにつれて好きになったのよね。)

「好きになる」を英語でget under one’s skinと言います。「人のとりこになる」というニュアンスで、「意図的に好きになろうとしてなった」というよりも、「想定外の形で好きになった」という感覚です。なお、get under one’s skinを文字通り訳せば、「自分の皮膚の下に入る」なのですが、こうした新たな語義になるのが英語の興味深いところです。

ちなみにフランク・シナトラのラブソングの中に”I’ve got you under my skin”があります。1956年の作品で、「あなたはしっかり私のもの」という邦題がついています。

https://youtu.be/KHEmCTOt2Xc?si=OxeIhIpvb83zjE8M


get under someone’s skin (人)をイライラさせる

The passenger next to me is constantly on the phone.  He really gets under my skin. (隣の乗客はずっと電話をかけているよ。本当にイライラさせられる。)

例文1と全く同じget under someone’s skinですが、ここでは何と「(人を)イライラさせる」という意味になります。完全に同じ単語を使いながら、正反対の意味!こうなると同時通訳現場では話の流れで判断するしかありません。実はとても厄介なフレーズでもあるのですよね。

こうした表現を英語で、contronym(コントロニム)と言います。ローマ神話の神ヤヌスには顔が二つあり、それぞれが正反対を向いていることから来たもので、Janus-faced wordとも言われます。ヤヌスが気になる方はぜひ画像検索してみて下さいね。なお、contronymの例では「dust(塵を払う)(粉末を振りかける)」や「overlook(監視する)(見逃す)」などがあります。ややこしいですよね。


have a thick skin 打たれ強い

The candidate always looks confident.  He really has a thick skin(その候補者はいつも自信に満ちています。本当に打たれ強いですよね。)

have a thick skinは文字通り訳せば「厚い皮膚を持っている」となりますが、慣用句として「打たれ強い、面の皮が厚い」という語義を有します。けなされても大丈夫という様子です。

なお、have a thin skinはその正反対で、「打たれ弱い」という意味になります。ちなみにskinの語源は古ノルド語のskinnで(皮〔膚〕)です。敷物用の獣皮はhide、日本語の「スキンシップ」はpersonal/physical contactと言います。

jump out of one’s skin 心臓が飛び出るほど驚く

I nearly jumped out of my skin when I heard that the actor is getting married. (その俳優が結婚すると聞いて、私は心臓が飛び出るほど驚きました。)

「心臓が飛び出るほど驚く」を口語英語でjump out of one’s skinと言います。「自分の皮膚から飛び出す」というのが面白いですよね。放送通訳現場ではこのような口語表現がよく登場するのですが、正直なところ、surprised / astonished / shocked などの一語で表して頂いた方が訳しやすいと思います。慣用表現はなかなか大変です。

ちなみにjump out of one’s …で調べたところ、jump out of one’s bodyjump out of one’s chestが同じ意味として辞書に載っていました。一方、日本語の「ビックリ仰天」の「仰天」は「空を見上げること」ですが、元は中国語です。感謝や悲しみ、そして興奮を表すのだそうです。

いかがでしたか?今月はskinを用いた英語フレーズを見てみました。ちなみに私は基礎単語ほど学習者向け英英辞典で調べるのが好きで、skinを引いたところ、”the natural outer layer of a person’s or animal’s body”(ロングマン現代英英辞典)とありました。わかりやすいですよね。



柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当。大学や企業での学習アドバイス経験多数。各種サイトでコラムも執筆中。

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