ワンランクアップの英語表現
2025.01.07
スキルアップ
187回「juiceとsoupを使った英語フレーズ」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
通訳者デビューをして間もない頃。某トマト飲料メーカーを訪問しました。案内されたのは応接室。壁には立派なトマトを描いた日本画が飾られています。ソファはふかふかで、それだけでも緊張。会議開始まで待っているとスタッフさんがしぼりたてのトマトジュースを持ってきてくださいました。実に美味でした。

ところが!水と比べるとトマトジュースは喉越しに貼りつく感じ。その後の通訳中、何となく気になったのでした。水を持参し忘れた私は反省。以来、水は通訳現場に必ず持って行くようになりました!
今月はjuice とsoupを使ったフレーズのご紹介です。
1 juice up 活性化する
In order to increase our sales, we need to juice up the discussions. (売り上げを伸ばすためには、議論を活性化する必要がありますよね。)
「活性化する」を英語でjuice upと言います。これはアメリカの口語表現で、「燃料を補給する」「携帯電話を充電する」という語義もあります。英単語juiceには「果汁」の他に「エネルギー」の意味も存在することから、このフレーズが生まれました。なお、辞書でjuiceを調べると、「100%果汁のものを指す」とあります。炭酸水が混ざっている場合はpopまたはsodaです。
ところで昭和時代に幼少期を過ごした私にとって、「コンクジュース」という言葉は懐かしい響きをもたらします。これは「濃縮ジュース」のこと。concentrated juiceから来ているのですよね。
2 stew in one’s own juice 自業自得に苦しむ
He has spent so much money on his hobby and is in debt mode again! Well, let’s leave him to stew in his own juice. (彼は自分の趣味にたくさんお金を使って、また借金状態に陥っているよ!まあ、自業自得に苦しむのも仕方ないよね。)
「自業自得に苦しむ」を英語でstew in one’s own juiceと言います。文字通り訳すと「自分の果汁の中で自ら煮え立つ」という感じでしょう。初めてお目見えしたのは19世紀とされています。なお、stewは日本語にもある「シチュー」のことですが、英語では発音が異なるので注意が必要です。
ところで「煮る」の単語にはいくつかあります。「ぐつぐつ煮る」のであればstewですが、「ことこと弱火で煮る」場合はsimmerを使います。「茹でる」はboilの一方、「沸騰させて煮る」場合はpoachを用います。違いが面白いですよね。
3 from soup-to-nuts あらゆる
This webstore sells everything from soup-to-nuts. (このウェブストアでは、あらゆる商品を販売しています。)
「あらゆる、何から何まで」を英語でfrom soup-to-nutsと言います。主にアメリカで使われる口語表現です。soup-to-nuts自体は「フルコースの」という食事に関する形容詞で、そこから転じて「すべてそろった」「全部」という語義を有するようになりました。確かにコース料理の場合、スープが最初に提供されて、食後にはナッツが出てきますものね。
ちなみにオランダを旅した際、フルコース料理を味わったことがあります。かなりのボリュームで、コース半ばで白旗を掲げそうになったのですが、何とデザートはチーズでした。さすがチーズ産出国オランダです。
4 in the soup 窮地に陥る
We need to check the figures carefully so that we won’t be in the soup once we start selling the product. (数字を慎重に確認しないといけませんね。製品の発売開始後に窮地に陥ることのないようにするためにも。)
「窮地に陥る」を英語でin the soupと言います。語源は19世紀にアイルランドで発生したジャガイモ飢饉です。当時、アイルランドで食堂を経営していたのはプロテスタントのイギリス人。ここで食事をするためには、カトリック教徒のアイルランド人は改名と改宗を強いられたそうです。それぐらい苦境に陥っていたのです。
(https://www.phrases.org.uk/bulletin_board/8/messages/1091.html)
いかがでしたか?今月はjuiceとsoupを使った英語フレーズを見てみました。ところで日本スープ協会は12月22日を「スープの日」に制定しています。「いつ (12) もフーフー (22) スープをいただくことから」だそうです。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラム執筆にも従事。
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