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ワンランクアップの英語表現

2023.07.01

スキルアップ

 第169回 「doubleを使った英語表現」

 第169回 「doubleを使った英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

私は小中学校時代をイギリスの学校で過ごしました。当初は英語もわからず、しかも運動音痴。ただ、スポーツの中で唯一好きだったのがテニス。他の球技はダメでもテニスだけは何とか同級生に追いつけるぐらいにはいきました。ちなみに今でもテニスの4大大会には注目しています。シングルスだけでなく、ダブルスも見ごたえがありますよね。何しろボールの速度が格段に速いのです。ウィンブルドンの試合は毎年7月上旬。今年も楽しみにしています。


今月は、テニスの「ダブルス」にちなんで、doubleを用いた英語表現です。


on the double 猛スピードで、大急ぎで

In order to play with his friend, my son left on the double after returning home from school.  (友達と遊ぶため、息子は学校から帰宅するや大急ぎで出かけてしまいました。)

「猛スピードで、大急ぎで」を英語でon the doubleと言います。文字通り訳すと「ダブルで」となりますので、不思議な印象ですよね。実はこの語源、軍隊用語なのだそうです。英語で「駆け足」をdouble timeと言うため、そこから派生して「大急ぎで」という意味になったのだとか。英語フレーズはそれぞれ色々な成り立ちがあり、調べて見ると実に興味深いですよね。

一方、double自体の語源はシンプル。「2」を表すduoと「追加」を意味するplusが結合して変化したものです。


double up with laughter お腹を抱えて笑う

His joke made me double up with laughter.  (彼のジョークに私はお腹を抱えて笑いました。)

「お腹を抱えて笑う、捧腹絶倒」を英語でdouble up with laughterと表現します。double up自体が「二つ折りにする」という意味であることから、確かに面白くてお腹を抱えて笑う様子が想像できそうです。

ところでジョークと言えば、昔、アメリカでstand-up comedyを見ました。当時私はすでに通訳の仕事をしていたので、自分のリスニング力にはある程度の自信があったのですね。ところが何を言っているのかさっぱり聞き取れない。しかも、同じ個所で一緒に全く笑えないという状況でした。おそらくアメリカン・ジョークの笑いのツボは、私が慣れ親しんでいるイギリス的ユーモアとは違うのかも、と思ったのでした。


in double harness 二人で協力して

The sisters work in double harness to succeed in their business. (姉妹はビジネスで成功するため二人で協力して仕事をしています。)

「二人で協力して」を英語でin double harnessと言います。ハーネス自体は乗馬用語として日本語にもなっています。「引き具、馬具」のことですよね。Googleの画像検索でdouble harnessと入れると、2頭立ての馬の写真が出てきます。ここから「二人で協力して」という意味になっていることがわかります。ちなみにほかにも「夫婦で協力して」「結婚している」という語義もあります。


double down on … ~を強化する

I want to live my life fully.  That’s why I need to double down on my effort and work harder.  (私は人生を満喫したい。だから、もっと頑張りを強化して努力しないと。)

double down on …は「~を強化する」という意味です。粘り強く熱心に取り組むというニュアンスがあります。もともとdouble downは賭けの世界に出てくる用語で、「倍賭けする」という意味。今の時代ではギャンブルというと、いろいろな規制の対象になっていますが、ギャンブルから生まれたフレーズは英語にも日本語にもあるのですね。たとえば日本語の「一か八か」は「丁」と「半」の漢字の上の部分である「一」と「八」から来ています。一方、「ぞろ目(揃目)」も「さいころを二つ同時に振り、同じ目が出ること」が語源です。

ところで「ぞろ目」を英語で調べたところ、snake eyesという語が出てきました。爬虫類ニガテな私にはビックリのフレーズでした。

いかがでしたか?今月はdoubleを使った表現をご紹介しました。ところで私は自宅の日めくりカレンダーを毎朝チェックしており、各種記念日に魅了されています。「毎月11日」は某食パンメーカーが定めた「ダブルソフトの日」。その食パンを真ん中で半分にすると数字の1に見え、二つ並べることで「ダブル」になる、というわけです。こうした由来も調べて見ると楽しいですよね。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当。大学や企業での学習アドバイス経験多数。各種サイトでコラムも執筆中。


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