ワンランクアップの英語表現
2023.11.01
スキルアップ
第173回 「地図関連の用語を使った英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
私は子どものころから紙の地図が好きで、今でも地図を手にすると長いこと見入ってしまうほどです。眺めているだけで旅気分になれるフシギな世界。道路や山、地名や湖、標高など、見ているとどんどん想像が膨らむのですね。我が家にカーナビが導入されたときも、最後まで反対して(?)いたのが私だったほど。地図が描かれた絵画や測量図をデザインしたグッズなども好きで、集めています。

そこで今月は地図にまつわる語を用いた英語フレーズを見ていきましょう。
1 map out ~を綿密に計画する
“Our boss mapped out a schedule in just an hour.” (上司はわずか一時間でスケジュールを綿密に計画しました。)
「綿密に計画する」を英語でmap outと言います。mapは「地図」という名詞の他に、「地図を作る」という動詞でも用いられます。ここではoutを付けた句動詞となっているのがわかります。句動詞は簡単な動詞にout, in, alongなどの前置詞が付き、意味が当初の動詞とは異なるものになるケースが多いのですね。よって、その都度語義を覚えておくことが肝心です。
mapの語源はラテン語でmappa mundi(世界の地図)から来ています。昔の世界地図の上端にはMappa Mundiと描かれたものもあり、大陸の形も実にユニーク。まだ測量法もなく、大航海時代の前は想像の域を出なかったのですよね。
2 off the charts とてつもなく大きい
You’d better be careful with what you eat or otherwise, your BMI could be off the charts. (食べ物に注意しないといけないね。さもないとBMIがとてつもなく大きくなってしまうよ。)
英語で「とてつもなく大きい」を口語表現でoff the chartsと言います。chartは「図、表、地図」などの意味がありますが、まさにそれらから外れてしまうと「大きい」というニュアンスを感じることができますよね。なお、この表現はハイフンで結び、”It was off-the-charts delicious!” (半端なくおいしかった!)などと用いることも可能です。
ところでchartの語源はcharta(一枚の紙)というラテン語です。cardやcharterも同じ語源であり、「(企業)カルテル」のcartelも同じ語源が派生したイタリア語です。
3 beyond the compass ~の範囲外で
I’m afraid that topic falls beyond the compass of my research. (そのトピックはあいにく私の研究の範囲外です。)
beyond the compass は「~の範囲外で」という意味です。compassは辞書を引くと「羅針盤、コンパス、領域、範囲」などの語義があります。ここでは「領域」のニュアンスで用いられています。ちなみに製図用のコンパスもcompassですが、a pair of compassesと複数形になるのでぜひ覚えておきましょう。
上記表現はbeyond the scopeと言い換えることもできます。英語学習の際には、類似表現も調べてみると、表現力アップにつながります。
4 meridian 頂点、絶頂期
Although she experienced some hardships, she is now at the meridian of her life. (彼女は辛さも経験しましたが、今や人生の絶頂期にあります。)
「頂点、絶頂期」を英語でmeridianと言います。meridian自体は「子午線、経線」のことですが、比ゆ的に「幸福などの絶頂、頂点」も表します。気力や健康の全盛期、つまり「盛り」というニュアンスもあるのですね。meridianの語源はラテン語のmeridianusで「真昼の」という意味です。
ところで「最も重要な、極上の」という意味のprimeという単語、今では某通販サイトでもおなじみですよね。テレビ界でprime timeと言うと、最も一般的な視聴時間帯、すなわち夜20時から23時までの間を指します。私が日ごろ同時通訳をしているCNNにも”CNN Primetime”という番組があり、日本時間の午前11時から12時までの放映です。アメリカではちょうど夜のゴールデンタイムということになります。
今月は地図関連の用語を使った英語フレーズをご紹介しました。ところで私は数か月前に出かけた赤坂の古民家風カフェに魅了されたことがあります。と言うのも、店内には東京の古地図や昔の英語ガイドブックなどが並んでいたのですね。おいしいコーヒー片手に地図好きをうならせてくれる、そんなお店でした。
柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当。大学や企業での学習アドバイス経験多数。各種サイトでコラムも執筆中。
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